超音波浮揚させた小物体への液体塗布の実験を平成29年度に行ったが、その過程で、超音波浮揚の安定度を保つためのフィードバック系を考案している。浮揚空間にさまざまな物体を、操作の都合上、挿入することがあるが、その物体が定在波音場を乱し、音場の共振条件からずれるという問題を解決するためである。反射面に設置した薄型圧電素子で音圧を検出し、それを振動子駆動回路に正帰還する方法であるが、広い範囲で安定に動作させるには振動系のQ値を下げる必要があることが明らかになった。 研究期間を延長した本年度は、動作周波数範囲が比較的広く、十分な振動振幅が空気中で得られる振動系について検討した。このために、従来の金属を用いた振動系にかわり、振動特性がよいプラスチック材料で作った超音波振動子を検討した。ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂は大振動振幅下でもある程度のQ値をもつことを研究代表者は別の研究課題において見い出しており、このPPS樹脂を本研究の振動系に用いることを試みた。PPS樹脂によってもランジュバン振動子などが作れること、適度なQ値を有することなどがわかった。また、PPS樹脂はヤング率と密度が金属よりも大幅に小さいため、比較的大きな振動速度が得られた。一方で、小さな機械的負荷でも振動振幅が低下してしまうことが明らかになった。しかし、本研究のような空気中での利用では、機械的ないし音響的負荷は小さいので、この欠点はあまり問題にならないと考えられた。また、樹脂材料なので、金属を腐食する性質をもつ液体の操作にも有効であると考えられる。 また、上下に平行な振動板を用いて液滴や小物体を浮揚させるため、2つの振動板の横方向位置を半波長ずらし、振動の時間位相を90度ずらすことで、2つの振動板間に横方向の進行波音場を起こすことを考案し、実験により動作を確認した。
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