研究実績の概要 |
本年度は、超音波アシスト水熱合成法によるPZT膜の複数回合成による厚膜化に関する研究を行った。水熱合成法は出発原料の溶液を圧力容器に入れ、密封して熱することにより、高温高圧下で反応を促進させる合成法である。本研究ではさらに、反応中に超音波を照射することで音響流やキャビテーションを発生させて反応を促進させることで、得られる膜厚を増やすことができる超音波アシスト水熱合成法を採用している。 超音波アシスト水熱合成法を用いたPZT成膜の先行研究では出発原料としてZrCl2O・8H2Oの1 mol/Lが6.86 mL, Pb(NO3)2の1 mol/Lが11.48 mL, TiO2 + H2Oが0.13 g+ 5.15 g, KOH 4 Nが26.38 mLで、温度160℃で24時間反応させた。このとき、最初の18時間を共振周波数30kHzのランジュバン型振動子を用いて超音波照射をするという条件で、Ti基板上に最大の膜厚を得られることがわかっている。しかし、同条件で2回繰り返し成膜を行うと、1回合成した時の2倍の膜厚が得られない。そこで、先行研究の条件によって1回の成膜で得られるPZTと同様な組成が得られるように、先行研究では出発溶液のTi/(Zr+Ti) = 0.2だったのを、本研究ではTi/(Zr+Ti) = 0.6として、つまりZrCl2O・8H2O 1 mol/Lを6.86 mL, TiO2 + H2Oを0.41 g+ 8.61 gに変化させて合成実験を行った。 その結果、先行研究の条件では2回合計で7.5 + 3.0=10.5 ミクロンの厚さを得ることができたのに対して、本研究では7.5 + 23.6 = 31.1ミクロンの厚さを得ることができた。また、この条件で4.5 mm×1.0 mm×0.10 mmのTi基板上に31モードの振動子を作り、振動速度を測定したところ5VP-P、552 kHzで共振し、2.2 mP-P/sの振動速度を得ることができた。
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