小型で高出力を可能にする圧電アクチュエータを実現するためには、圧電厚膜を合成するプロセスを確立する必要がある。本研究では超音波アシスト水熱合成法と命名した独自の圧電厚膜成膜法を提案し、2回のプロセスを繰り返すことによって30ミクロンのPZT厚膜合成に成功している。この圧電厚膜の振動特を計測することで1m/s以上の限界振動速度を有する優れた特性を持つことを明らかにした。また、環境負荷の小さい非鉛材料であるチタン酸バリウムを研究対象として、超音波アシスト水熱合成法を適用した。昨年度までに、反応条件を最適化させて4ミクロンの厚さを実現した。超音波アシストを行わない既存の水熱合成法では、チタン酸バリウムの粒子が基板上に疎らに堆積していただけの状態と比べると超音波アシストの効果が非常に大きいことが分かる。ただし、4ミクロンの厚みが実現できても、表面の凹凸は激しいために、上部電極を設けて特性を計測しようとしても、電気的短絡が生じてしまうという問題があった。 そこで、本年度はプロセスを再検討して更なる厚膜化を試みたが、上手くいかなかったたまに、プロセスを繰り返し行うことで電気的短絡を防ぐこととした。その結果、10ミクロンと十分な厚みを得ると共に、電極間に900Vで100Hzの交流電圧を与えても電気的短絡をすることがなかった。このとき、チタン酸バリウム厚膜の比誘電率は300であり、過去の文献と同等の優れた特性を示したが、強誘電体特性特有のDEヒステリシスではなく、上誘電体的な誘電特性となった。これは、水熱合成法の成膜プロセス中に分極方向が揃う現象に関連しているものと考えられる。
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