研究課題/領域番号 |
26289064
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
朝間 淳一 静岡大学, 工学部, 准教授 (70447522)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ベアリングレスモータ / 磁気軸受 / 磁気浮上 / 零相 / シングルドライブ |
研究実績の概要 |
過去の磁気浮上モータでは,回転・浮上用に複数のパワーモジュールが必須であった.これに対し,本研究ではシステム全体の小形化・低消費電力化・低コスト化を目指し,三相パワーモジュール1台のみで駆動可能な磁気浮上ベアリングレスモータシステムの新コンセプトの提案・実証およびその基盤構築を目的としている.その手段として,三相巻線の中性点と,パワー回路の電源中点間に負荷を挿入し,この部分(零相)を流れる電流(零相電流)を,パワースイッチング素子を追加せずに制御する.本研究では, 1.三相で永久磁石モータ,零相で1自由度の磁気浮上を制御, 2.三相で2自由度の磁気浮上制御,零相で単相モータ制御,の2通りの単一パワーモジュール駆動式磁気浮上モータシステムに応用している. 平成27年度は,1のシステムに関して,モータ負荷時の磁気浮上位置決め精度が悪化する問題が発生したため,オブザーバを用いた零相の電圧外乱の推定・補償を試みた.この実験装置は,1.2kW三相永久磁石モータと,鉄球(直径50mm)磁気浮上装置から構成され,三相パワーモジュール1台のみで,永久磁石モータのベクトル制御と鉄球磁気浮上を実現している.磁気浮上用電磁石の電圧から電流までの伝達関数を測定,多項式近似し,外乱オブザーバに組み込むことで,鉄球の位置決め精度を改善した.また,2のシステムに関して,6スロット6極の2自由度制御形単相ベアリングレスモータを設計,試作した.回転子は直径58mm,高さ5mmのアウターロータ形で,固定子には,三相4極の磁気浮上巻線と,単相6極のモータ巻線が施されている.実験により,本試作機は,三相パワーモジュール1台のみを用いて,3000rpmでの磁気浮上回転が可能であることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績概要記載1の,零相電流を磁気浮上に用いるシステムに関して,磁束鎖交数とインダクタンスの空間高調波を考慮した電圧電流方程式を導出し,さらに,磁気浮上の位置決め精度を,外乱オブザーバを用いて改善した.また,研究実績概要記載2の,零相電流を単相モータ駆動に用いるシステムに関して,実機を用いて磁気浮上回転が可能なことを実証している.したがって,単一パワーモジュール駆動式磁気浮上モータの基盤構築として,モデルの提案,理論解析,実機実証を行っているため,おおむね順調に進行していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
研究実績概要記載1の,零相電流を磁気浮上に用いるシステムに関して,現在,零相電流の直流成分が電源電圧の中間点電位の変動要因になっているため,パワースイッチング素子を追加せずに受動素子のみでこの問題を解決する.また,研究実績概要記載2の,零相電流を単相モータ駆動に用いるシステムに関して,実機を用いて,各モデルパラメータの測定,負荷試験を行う.また,モータ巻線と浮上巻線を統合し,三相巻線のみでの磁気浮上回転を試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究実績概要記載1に関して,零相電流の直流成分による電源電圧の中間点電位の変動を解決するための,パワー回路を製作予定であったが,位置決め精度の改善に時間を要したため,製作できなかったため.また,研究実績概要記載2に関しても,巻線統合形のベアリングレスモータ(第2次試作)を製作予定であったが,第1次試作機の製作と実験に時間を要したため,製作できなかったため.
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次年度使用額の使用計画 |
零相電流の直流成分による電源電圧の中間点電位の変動を解決するための,パワー回路を製作,および巻線統合形のベアリングレスモータを製作予定である.
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