過去の磁気浮上モータでは,回転・浮上用に複数のインバータ,トランジスタが必須であった.これに対し,本研究ではシステム全体の小形化・低消費電力化・低コスト化を目指し,三相インバータ1台のみで駆動可能な新しい磁気浮上モータシステムの提案・実証およびその基盤構築を目的としている.その手段として,三相巻線の中性点とパワー回路の電源中点間に負荷を挿入(零相)し,パワースイッチング素子を追加せずに零相電流を制御する.本研究では, 1.三相負荷で永久磁石モータのベクトル制御,零相で1自由度の磁気浮上制御, 2.三相で2自由度磁気浮上制御,零相で単相モータの回転制御, の2通りの磁気浮上モータシステムを提案している.平成28年度は,上記1のシステムに関して,モータ負荷時の浮上位置決め精度が悪化する原因を詳細に検討した.磁気浮上制御系の振動は1fおよび3f(f:モータ駆動周波数)が顕著であった.3f振動の原因は,モータのPWM駆動による零相電圧変動(電圧外乱)が,1f振動の原因は,三相負荷不平衡(電圧外乱)および電流センサ検出誤差(電流外乱)であることを明らかにした.これに対して,外乱オブザーバを用いて電圧外乱を,電流検出方法をuvw相検出からuvz相検出とすることで電流外乱を補償し,最終的には,モータ負荷時に10μm以上であった位置決め精度を,無負荷時と同等の数μmレベルに低減した.上記2のシステムに関して,試作した2自由度制御形ベアリングレスモータを用いて,浮上回転試験および性能評価を行った.まず,回転角度による支持力変動を補償し,振動低減を図った.次いで,アンバランス補償を行い,10000rpmまで低消費電力で回転が可能であることを示した.最後に,非接触式の渦電流ブレーキを製作して負荷試験を行い,浮上電力を含めて75%のモータ効率であることを示した.
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