研究課題/領域番号 |
26289065
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
劉 莉 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 助教 (50380093)
|
研究分担者 |
陳 勇 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 教授 (70512458)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | ナノファイバー / マイクロ流体 / 幹細胞 |
研究実績の概要 |
現在のiPS細胞作製技術では、大量に採取した体細胞に対して複数の初期化遺伝子を導入し、そこから生成してくるコロニーを増殖・培養することによりiPS細胞を得ている。従って,得られるコロニーが単一クローンである保証はなく、むしろ由来の異なる細胞が異なる初期化を受けて得られたヘテロな集団と考えるべきである。このことは,創薬においては研究の再現性に、再生医療においては安全性に,深刻な影響を与える。本研究は、ナノファイバー上では単一iPS細胞が増殖できるという申請者らの発見を応用し、マイクロ流体デバイスを用いて、初期化操作により得られたiPS細胞コロニーから単一細胞を分離・隔離して分化させる手段を開発することを目的としている。これにより、由来が明確な細胞による基礎実験・創薬研究を可能にするとともに、クローンを大量培養することにより、安全な再生医療への道を開拓する。すなわち、「血統書付き」のヒトiPS細胞および分化細胞の提供を実現する。 本研究では、「血統書付き」優良iPS細胞の選出と培養方法を樹立するために,申請者らの独自な技術であるナノファイバー上での細胞培養とマイクロ流路技術とを用いて実現することとする。これによって、今までできなかった単一のヒトiPS細胞培養可能な環境を見出すすることを実現する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、初期化した細胞塊から単一細胞を分離し、細胞の由来が明確なiPS細胞コロニーの作成および分化細胞の生存環境を見出すために、ナノファイバーとマイクロ流体デバイスと融合した“地球-衛星”単一iPS細胞培養システムを開発し、iPS細胞を利用した創薬および再生医療への新たなツールを提供することを目的とする。 昨年度の目標は細胞培養に必要な生体内微小環境を模倣し、シングル細胞から培養可能な“地球―衛星”マイクロ流体デバイスシステムの開発である。実際に、“地球―衛星”マイクロ流体デバイスシステムの作製も成功し、さらにシングルヒトiPS細胞からコロニーまで培養可能することも確認できたが、コロニーまで培養成功率が低いことを明らかになった。その原因をはっきり解明できないが、地球から提供されている栄養は均一よくクロースの衛星環境に届けにくいではないかと予測している。 この問題が解するため、“地球―衛星”マイクロ流体デバイスシステムの代わりに、マイクロウェールデバイスに変更した。それによって、クロースの衛星環境を開放させ、均一よく地球から提供された栄養を得ることができるようになる。その結果、単一細胞たちの中に30%のシングル細胞からコロニーまで培養を成功したことを明らかになった。さらに、得たコロニーを馴化培養を行って、いくつシングル細胞由来した細胞株を樹立した。 現在、以上の方法によって、得た細胞株の多能性の評価を行っている。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度、“地球-衛星”型のマイクロ流体デバイスからマイクロウェールに変更した結果、予想以上に進展して,単一iPS細胞由来した細胞株を樹立することができた。 今年度、予定通りに、得られた細胞を分子生物学実験により評価する。具体的に、幹細胞マーカー(Oct4やNanogなど)の免疫染色法を用いる。また、自己複製制御機構の解明のためには、遺伝子レベル解析(Microarrayを用いたmRNA解析)、エピジェネティック解析(ゲノム遺伝子上におけるメチレーション解析、ヒストン修飾解析)を行う。 一方、解析データを得るまで、残っていた細胞“種”として保存する。細胞にダメージが与えず、安全な保存法を検討する。 さらに、余裕があれば、選出された細胞株の間の分化能を比較し、来年度の目的細胞への分化誘導ために準備し始める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
実験補助を雇用する予定だったが、適切な人材を確定していないため、人件費およびその方の実験消耗費用は使用していない。
|
次年度使用額の使用計画 |
今年度は引き続き適切な人材を探す予定であるため、計画通りに人件費を使用する予定である。
|