研究課題
現在のiPS細胞作製技術では、大量に採取した体細胞に対して複数の初期化遺伝子を導入し、そこから生成してくるコロニーを増殖・培養することによりiPS細胞を得ている。従って,得られるコロニーが単一クローンである保証はなく、むしろ由来の異なる細胞が異なる初期化を受けて得られたヘテロな集団と考えるべきである。このことは,創薬においては研究の再現性に、再生医療においては安全性に,深刻な影響を与える。本研究は、ナノファイバー上では単一iPS細胞が増殖できるという申請者らの発見を応用し、マイクロ流体デバイスを用いて、初期化操作により得られたiPS細胞コロニーから単一細胞を分離・隔離して分化させる手段を開発することを目的としている。これにより、由来が明確な細胞による基礎実験・創薬研究を可能にするとともに、クローンを大量培養することにより、安全な再生医療への道を開拓する。すなわち、「血統書付き」のヒトiPS細胞および分化細胞の提供を実現する。過去の三年間において、シングル細胞の単離と培養するするデバイスを改良してながら、シングル細胞からコロニーまで培養成功することができた。さらに、樹立された2タイプの細胞株の間、明らかに細胞の形態、多能性関与する遺伝子の発現レベルが異なることは明らかになった。そのメカニズムを追求するため、いくつ情報伝達回路との関連性を調べた結果、アクチンの分布と強く関与することが解明できた。また、シングル細胞から樹立されたiPS細胞株の間、多能性能に限らず、分化能も異なる傾向がみられた。現在それぞれ目的細胞を分化誘導させ、定量的に2つタイプの細胞株の分化能の違いを調べている。
2: おおむね順調に進展している
昨年度シングルhiPS細胞由来の2つタイプの細胞株の全遺伝子しらべた結果、多能性能が違うことがわかった。今年度そのメカニズムを解明するため、いくつ可能性が高い伝達回路の関与性を検証した結果、ゼラチンナノファイバーの基板に対して、2つタイプの細胞株の接着能力が違うことを明らかとなった。それによって、2つタイプ細胞株のアクチン分布も異なることが解明された。さらに、2つタイプの細胞株の間、分化能の違いも見られた。
過去の三年間は予定通りに実験を進んでいたが、論文はNature Materialに投稿して、分化誘導の定量的な実験が追加された。現在単一細胞由来した細胞株を用いて、それぞれ外、中、内胚層神経、心筋、肝臓細胞へ分化誘導実験を行っている。それぞれ三種類細胞の分化誘導プロトコルを確定し、最適化を行い、分化能の違いを定量的に評価する予定。具体的に (1)フローサイトメーターで分化誘導率を定量的に評価する。(2) リアルPCRで遺伝子レベルで分化誘導された細胞の成熟度を確認する。(3) それぞれ分化誘導された細胞の機能評価を行う。例え:多電極で2つタイプの細胞株から誘導された神経、心筋細胞の電気生理学機能を比較する。ELESAで肝臓細胞の機能を調べる。
本研究課題はiPS細胞コロニーから単一細胞を分離及び培養する技術の開発を目的としている。過去の三年間は予定通りに実験を進んでいたが、昨年度11月、論文はNature Materialに投稿し、レビューから分化誘導実験も追加された。現在単一細胞由来細胞株を用いて、神経、心筋、肝臓へ分化誘導実験を行っている。実験を実行する人材の確保、実験を行う時間がかかるため、本課題は来年まで延長する予定。
来年度からそれぞれ2つタイプのhiPS細胞株から神経、心筋、肝臓へ分化誘導実験を行い、実際に分化能の違いを定量的に検証する。
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