本研究では、小型レーザレーダ、ヘッドアップディスプレイやマイクロプロジェクタへの適用を可能とする光偏向用小型ミラーとして、感光性ポリマーヒンジと単結晶シリコンヒンジを組み合わせた新構成のMEMS (Micro Electro-mechanical Systems)ミラーを提案し、作製プロセスや材料特性を研究し、従来にない大偏向角駆動が可能なMEMSミラーを検討した。具体的には、低剛性延性材料であるポリマーと高剛性脆性材料のシリコンをそれぞれ大偏向低速軸と共振高速軸のヒンジ材料として組み合わせることで、単一材料では実現困難な大偏向・低消費電力・小型・高耐衝撃性の2次元ラスタスキャン方式レーザ走査を可能とするMEMSミラーを検討した。 その結果、異種材料を組み合わせたハイブリッドMEMSミラーについては、低速軸ヒンジを従来のシリコンデバイスに対して小型化することで、結果として、外部設置の磁石間距離を縮めて強磁場化し、より小さな印加電流で大きな駆動力を得ることができた。また、磁気誘導起電力型速度センサを集積したMEMSミラーについては、ロックイン信号処理を組み合わせることで、集積化したセンサによりミラーの角速度に相当する電気信号を取得でき、フィードバック制御に利用できることが分かった。 特に、ポリマーヒンジ構造を組み込むことで、製作したミラーは、DC±6mAで±30deg.の偏向角が得られ、大偏向・低消費電力向けのMEMSミラーとして有効であることが分かった。さらに、当該ポリマーマイクロ構造の派生技術として、いくつかの応用例を構築した。
|