研究課題/領域番号 |
26289068
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
岩田 浩康 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (30339692)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 認知神経リハビリテーション / ロボット工学 / 脳機能解析 / 運動学習 / 脳卒中片麻痺 |
研究実績の概要 |
本年度は,リハ病院において臨床研究を実施できる体制が整ったことから,計画を変更し,主に以下の二つの研究を行った:A)知覚モデル・逆モデルを独立に再構する運動学習スキームの構築;B)療法士・片麻痺者間で患側接地状態を背部で共有可能な知覚共感ウェアによる誤差覚知手法の構築 A)逆モデルおよび自己受容覚モデルを独立に更新する訓練プロトコールを発症から約3ヶ月経過した回復期片麻痺者二名(感覚障碍:軽度,軽度~中等度)に適用した.訓練タスクとして,左右対称運動を選定した.1日約40分の訓練を5日間連続して実施した上で,一週間を空けた後,訓練効果が維持されているのかを検証した.その結果,訓練前の左右対称運動では5~15度の角度差が生じていたのに対し,訓練後には左右の傾斜角度差が有意に小さくなっており(例えば,被験者Aの自己受容覚に基づく運動では,1日目7.0度,5日目2.2度,1週間後は1.9度を維持),片麻痺者においても上記の訓練プロトコールで両モデルを同時更新可能なことが示された. B)片麻痺者は,感覚障害に伴い歩行時における接地状態を知覚できず,異常接地の正確な認識および蹴り出しのタイミングの適切な制御が困難となる.そこで,療法士と片麻痺者の双方の背部に接地箇所を振動(患側足圧に基づく5点独立振動制御)で与えることで,踵接地の欠落や内反状態の継続など,患者が見逃し得る不適切な接地状態を療法士が感知し,患者に気づかせる新たな誤差覚知の仕組みを案出した.なお,健常歩行と異常歩行の差異は,拇指球と踵部内側の接地の有無であることから,「内反接地/非内反接地」,「前足部接地/踵部接地」を振動パターンで識別させることとした(立位⇒歩行).評価のため,回復期BRSⅢ~Ⅵの片麻痺者7名を対象に,15分×1日の介入を行った結果,介入前後で麻痺側重複歩距離の有意な増加が確認された(p<0.05).
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初設定していた課題は以下の二点である.このうち,②は昨年度の研究において本質的な成果が得られている. ①誤学習を抑制する誤差覚知RTの開発と効能検証 ②誤差覚知RTによるBF効能の脳神経生理学的検証
他方,本研究課題では,運動イメージと実際の運動との間に齟齬が生じ得る片麻痺者に対し,RT等を用いて誤差覚知を行う具体的方法論を構築し,その有効性を片麻痺者において検証することをメイン・ターゲットに据えている.リハビリテーションの運動学習において重要となる逆モデルと知覚モデルを更新させる訓練プロトコールに関して,片麻痺者での臨床評価を実施し,有意な運動改善効果を検証できた意義は大きい.また,リハ病院の療法士との連携体制も深まり,研究計画や開発装置に対する療法士からのフィードバックが得やすくなったことに加え,実臨床の場で実際に利活用可能な誤差覚知RTや訓練プロトコールを着実に開発できていることから,上記の①に関しても,当初以上の成果が得られていると考えられる.
|
今後の研究の推進方策 |
当初設定していた以下の課題に関して,2年間の研究を通じて,②では本質的な成果が,①では片麻痺者における有効性の検証まで達成できていることから,当初計画の主要要素は達成できた次第である. ①誤学習を抑制する誤差覚知RTの開発と効能検証 ②誤差覚知RTによるBF効能の脳神経生理学的検証
これまで開発したRTや訓練プロトコールを実臨床で活用する過程において,運動麻痺が強い片麻痺者への適応が課題となっていたことから,最終年度は,運動補助RTを活用しつつ,知覚支援RTや誤差覚知RTによる知覚支援技術により運動学習を効果的に進める方法論を模索してゆく予定である.ここで得られた知見は,脳神経学的な有効性を有し,かつ実臨床にも活用できるニューロ・RTリハビリテーションの基礎理論になり得るため,その意義は非常に高い.
|
次年度使用額が生じた理由 |
身体運動計測装置の購入費用として想定していたものの,納期を年度超えることが判明したことから,購入を見送った次第である.それに伴い,475,173円が次年度使用額として繰り越しとなった.
|
次年度使用額の使用計画 |
再度身体運動計測装置の価格と納期の確認を行った上で,それに充てる予定である.
|