平成28年度は、冷却時のコイル巻枠の過渡熱応力が超電導層の特性劣化(剥離)に及ぼす影響を調べるために、巻枠の材質がコイル冷却時の過渡熱応力に及ぼす影響を解析的に検討するとともに、液体窒素冷却時のコイル巻枠や超電導テープ線表面の熱ひずみ測定を通じて、コイル巻枠の過渡熱応力抑制に適したコイルの冷却方法について検討した。まず、巻枠の材質の影響については、通常使用するGFRP製の他に、SUS製とCFRP製の巻枠について検討した。その結果、SUS製巻枠の場合は、内側の超電導層端部において、冷却開始後10秒以内に2MPa程度の引張応力が生じるものの、その後は、すべての超電導層において圧縮応力に変化した。一方、CFRP製巻枠では、すべての超電導層において圧縮応力が生じた。また、GFRP製巻枠の軸方向熱膨張係数のみをCFRPの値に変更したところ、CFRP製巻枠の場合と同様の熱応力低減効果が得られた。これより、超電導層に働く劈開力の抑制には、SUS製やCFRP製の巻枠を適用するなどして、軸方向の熱膨張を抑制することが有効であることがわかった。また、当初は、冷凍機を用いて、エポキシ樹脂含浸した超電導コイルを液体窒素温度までゆっくり冷却することにより、コイル内の温度分布とひずみ分布の時間変化を測定する予定であったが、コイルの冷却パスの取り方(コイル冷却用伝熱板の大きさ、取り付け位置、取り付け方法など)に大きく依存し、液体窒素冷却時に超電導層に作用する剥離応力特性とは大きく異なることが明らかとなったため、液体窒素冷却コイルを用いて、コイル巻枠の過渡熱応力抑制に適したコイルの冷却方法の検討を行った。その結果、巻枠がGFRPの場合は、巻枠の外側(巻線側)よりも内側の方の軸方向ひずみが大きくなり、この差が巻枠の変形やコイル径方向応力発生に影響していることがわかった。
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