研究課題/領域番号 |
26289073
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
上野 敏幸 金沢大学, 電子情報学系, 准教授 (30338256)
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研究分担者 |
山田 外史 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 教授 (80019786)
小松崎 俊彦 金沢大学, 機械工学系, 准教授 (80293372)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 振動発電 / 無線センサシステム / 磁歪材料 |
研究実績の概要 |
本研究は、振動発電デバイスの高効率、広周波数帯域化により橋や自動車、機械の振動など実際の環境振動で自律的に動作する“電池のいらない無線センサシステム”の実用化を目指すものである。本年度において、発電デバイスの汎用構造を確立した。これは磁歪素子の短小化と同時にコイル巻き数を増加させることで高出力化を図り、素子のヨークへの接合を半田(将来的に溶接)で行うことで、耐久性を向上させた。実際、小型のデバイスの試作により212Hz, 1.2Gの振動下、平均電力1.5mW(電力密度3mW/cc)実証した。この構造はシンプルで量産に向くものである。また構造、磁気回路を考慮した力係数の理論式の導出を行い、高効率化のための設計指針を確立した。広帯域化においては共振現象を効果的に利用する単・多共振機構の有用性を実験により実証した。バネと錘で構成される単共振機構においては、これをデバイスに取り付けることで、発電量が向上した。また多共振機構は串団子のように3個の錘を細い弾性体で連結した構造で、これをU字型発電デバイスに取り付けたところ高次共振が低周波数で励振される効果が確認された。単・多共振の双方とも自動車の模擬振動下で機構がある場合の発電量はない場合に比べ2倍以上に増加した。また発電デバイスにダイナミックダンパの原理を利用した振動増幅機構を組み合わせるシステムの有用性を検証した。試作実験にて、増幅機構により発電量が大幅に向上することが確認できた。これはデバイスに作用する加振力が増幅装置により拡大されるためである。また共振周波数を電気的に制御する可能性について、接続するコンデンサの容量で共振周波数が10%程度変化することを実験により実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
高効率で量産向きの汎用デバイス構造を確立した。デバイスの広周波数帯域化においても共振機構、高次共振モード、振動増幅装置を利用する原理について、これらの有用性を実機により確認した。使用上の問題点を明らかにし、また理論、設計方針を確立したことで、今後より実用的な構造になると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
発電デバイスについては効率を向上させるU字構造を基本にした汎用デバイスの仕様を確立し、詳細な性能評価、耐熱・疲労試験を経てデバイスの有用、信頼性を実証、普及へ向けた施策を行う。 共振点を低周波数域に集中させるデバイス構造を考案、その設計法を確立し、その有用性を実験にて実証する。またコンパクトで実用的な振動増幅装置を考案し、これと発電デバイスと組み合わせることで、発電量の高感度、広周波数帯域化を図る。 共振周波数の制御においては、その理論、設計法を確立し、その変化幅を向上させる。また環境振動に追従して周波数を変化させるシステムを開発する。以上の効果を模擬振動試験により検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
U字型汎用デバイスの開発および部品設計、試作評価が次年度にまたがるため予算を繰り越すことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
試作機の新規コイルの巻き線治具製作費等に予算を利用する予定である。評価用の加振機およびオシロスコープを購入する予定である。
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