本研究では、研究代表者らが先導研究を推進している高温超伝導誘導同期モータ(High Temperature Superconducting Induction/Synchronous Motor: HTS-ISM)について、超伝導かご形巻線における電流輸送特性の温度依存性を積極的に利用した温度可変駆動に関する研究を実施した。H28年度は、H27年度に制作したGM冷凍機冷却クライオスタット内に5 kW級HTS-ISM試作機を縦置き設置する回転試験系を開発した。以下の結果が得られた。 (1) GM冷凍機のコールドヘッドと5 kW級試作機ケーシングの伝熱リード線の接続方法を工夫することによって、断熱空間内においても固定子・回転子共に110 K程度まで冷却することに成功した。その際、ケーシングのみの伝導冷却にもかかわらず、固定子-回転子間の定常温度差は2 K程度であった。 (2) 項目(1)の状態において、窒素ガスを封入して、その対流熱伝達による冷却効果も付与したところ、さらに冷却特性が改善して、70 K程度にまで冷却することに成功した。 (3) 項目(2)の状態において、最高回転数1800 rpmにおける無負荷回転試験に成功した。その際、10分程度運転状態を継続したが、回転子・固定子共に大きな温度上昇が無かった。 (4) 項目(2)のシステムを利用して、温度116 K(HTS回転子: 常伝導状態)および温度73 K(HTS回転子: 超伝導状態)における急加速試験を実施した。その結果、常伝導状態の回転子でも不安定状態に移行しないで加速したものの、指令に対する応答遅れが生じるのに対して、超伝導状態では速やかに同期回転状態に引き入れられることを明らかにした。 以上より、H28年度は定常状態としての温度可変運転を実現しただけでなく、液体冷却だけでなくガス冷却の可能性や過渡回転特性を明確化できた。
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