研究課題/領域番号 |
26289080
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
漆畑 広明 金沢工業大学, 工学部, 教授 (40723367)
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研究分担者 |
河野 昭彦 金沢工業大学, 工学部, 准教授 (40597689)
藤田 洋司 金沢工業大学, 工学部, 教授 (40720222)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | リチウムイオン電池 / 過渡応答 / 多孔質電極 / パルス / インダクタンス |
研究実績の概要 |
本研究は、電力変換によるリップル、サージ等の高周波外乱がリチウムイオン電池に及ぼす影響の解析技術構築を目指す。しかしこの分野の研究例は少なく、その原因は高周波信号に対する電極応答計測の困難さや多孔質電極が分布定数系であり電流・電圧分布の解析が困難なためと考えられる。そこで第一に数十μS過渡応答データの信頼性・再現性ある測定技術と実験系構築に注力してきた。第二に解析技術は電気工学解析ツールである回路シミュレータを活用し分布定数系等価回路網解析と電気化学反応速度論を融合し新たな多孔質電極解析技術を構築し、リソースは全て実験関連に投入してきた。その結果29年度は以下の進捗が得られた。技術蓄積ゼロから過渡応答実験技術の構築を目指して来たが、データの信頼性確認に最終年度も注力する。 ①負極多孔質電極モデルに、正極の過渡応答解析の基礎技術を適用した。負極表面被膜と電荷移動抵抗/電気二重層から構成される等価回路モデルを回路シミュレータに実装、負極反応と充電電流を分離した電流電圧分布解析技術構築。 ②正極細孔モデルは伝送路等価回路の重要パラメータである電荷移動抵抗推定法を実測値から、電極反応の拡散過程を考慮し理論推算する電極反応モデルにレベルアップ、回路シミュレータと電極反応解析の高度連携計算法を構築。この技術は多くの関連企業に注目され基礎技術として高評価、応用研究に進展中。 ③実電池の電圧パルス応答劣化の再現性確認のため、電圧ステップを印加しL成分の有無と電池劣化の関係を検討。昨年の実験結果の正当性を確認。電圧パルスの影響を拡張し、特に心配される雷など高電圧パルス印加時の電池への影響も考察した。 研究成果は解析基礎、実験技術が中心で特許出願には適さない、信頼性ある過渡応答データのため測定技術高度化が最重要と考える。また、成果は学会で発表し解析技術の一部は企業からも注目されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は技術蓄積がゼロからの出発であったが、当初の目標としてきたリチウムイオン電池の過渡応答において電気二重層充電電流と電極反応電流を分離するという過去に検討された事のない課題に対し、電気工学的解析ツールである回路シミュレータと電気化学理論の融合による解析法を提案する事が出来た点でおおむね順調に進んでいると言える。一方実験的には過渡応答測定技術についてはばらつきの少ないデータを取得するために測定法の改善を必要としている。 ①研究計画当初、研究項目【1】-b二重層充電電流と反応電流分離の方法検討に未知の部分があったが、多孔質電極の過渡応答解析のため等価回路と回路シミュレータを用いること、さらにその等価回路に伝送線モデルを用いることを発案し、多孔質電極の細孔内電流・電圧分布の解析が可能になっている。この技術は研究項目【2】モデル電池に電圧パルス波を入力した場合の検討における劣化解析についても応用できる。 ②上記技術を発展させ電極反応種の拡散方程式から電荷移動抵抗を理論的に推算する電極反応モデル方式にレベルアップし、回路シミュレータと電極反応解析の高度な連携計算アルゴリズムを構築した。 ③研究項目【3】実電池に電圧ステップを印加しインダクタンス成分の有無と電池劣化の影響について検討し昨年の実験結果の正当性を確認した。 ④懸念事項としては過渡応答測定時に内部抵抗にばらつきがある。このばらつきを改善するため今年度注力するが、解析技術は当初目標を実現している。以上の流れを最終年度である今年度に総括し成果と課題を明確にする。
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今後の研究の推進方策 |
30年度は最終年度として 本研究の骨格をなす重要課題である研究項目【1】【2】を総括する事を最重点とし、研究項目【3】実電池系の過渡応答ついてもまとめる。 研究項目【1】の(b)については回路シミュレータを用いた新たな技術をほぼ構築してきた。【1】(a)については実験系の構築として測定系、実験環境構築を完了し、モデル電池の構造検討の内、参照電極構造を精査し再現性ある過渡応答データを取得するため電池構造の最適化に集中する。 研究項目【2】モデル電池によるパルス応答解析の研究については、ほぼ完了した研究項目【1】(b)の技術をベースにリチウムイオン電池正極の多孔質電極内の電流・電圧分布の解析により電流集中等の情報が得られる。そこで今年度は負極につて検討を加え正極と負極の反応性を比較検討し【1】【2】の最終まとめとする。 以上、研究の中心は上記【1】【2】とするが研究項目【3】実電池系への適用研究は実回路を想定してインダクタンスを接続した実電池に連続パルス波を印加し劣化に対する影響についてまとめる。 最終的に以上結果を総合的にまとめ学会での発表を計画していく。また、研究分担者は電池のモデル化等の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
材料費の一部を次年度に移行した。
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