研究実績の概要 |
本研究は、電力変換によるリップル、サージ等の高周波外乱がリチウムイオン電池に及ぼす影響の解析技術構築を目指す。しかしこの分野の研究例は少なく、その原因は高周波信号に対する電極応答計測の困難さや多孔質電極が分布定数系であり電流・電圧分布の解析が困難なためと考えられる。そこで本研究では第一に数十μSレベルの過渡応答特性の信頼性・再現性ある測定技術の習得とそれを実現する実験系の構築に注力してきた。第二に解析は電気工学のツールである回路シミュレータを活用し、複雑な分布定数系等価回路網の解析と電気化学反応速度論を結合した新たな多孔質電極解析技術の構築を進めた。このためリソースは全て実験関連に投入してきた。その結果30年度は最終年度として当初の研究項目【1,2,3】について概ね目標を達成し今後の方向性を見いだすことができた。 研究項目【1,2】;反応種の拡散を考慮した電荷移動抵抗の解析 昨年まで電極反応速度に相当する電荷移動抵抗は実測値を用いていた。これを理論的に解析するため電極の等価回路(伝送線回路)から回路シミュレータにより電流電圧を推算し、この値と拡散方程式とバトラーフォルマー式を連成し電荷移動抵抗の電圧依存性を逐次計算する手法を構築。リチウムイオン電池の過渡応答特性を理論的に解析する手法を構築した。 研究項目【3】;実電池の電流分布解析 円筒型電池はインダクタンスを有しモデル電池で得た過渡応答解析技術を適用できない。そこで実電池の巻回構造をモデル化しインダクタンスを考慮した等価回路モデルを構築した。このモデルで集電端子の配置による電流分布の発生を再現可能となった。将来的にはこの等価回路モデルと先に述べた多孔質電極の過渡応答解析理論を連成し実電池の過渡応答解析が可能となると考えられる。
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