研究課題/領域番号 |
26289082
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
遠藤 恭 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50335379)
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研究分担者 |
山口 正洋 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10174632)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 電子・電気材料 / スピントロ二クス / 磁性 / 先端機能デバイス / 電子デバイス・機器 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、Ni-Fe、Fe-Si合金などの軟磁性薄膜、第三元素を添加した合金薄膜に対するスピンダイナミクスの基本特性(ダンピング定数、強磁性共鳴(FMR)周波数、FMRの半値幅)に着目して、スピンダイナミクスのメカニズムを把握し、合金組成および添加元素によるスピンダイナミクスの制御法の確立と、スピンダイナミクスに関連する磁性材料設計指針を確立することを目的としている。本年度の実績は下記の通りです。 ・Ni-Fe超薄膜のスピンダイナミクスに関しては、熱膨張係数の異なる基板(石英、ガラス、テンパックス)上に作製したNi-Fe超薄膜のダンピング定数の値は膜厚にはあまり依存せず基板に依存して異なっており、その原因は基板の熱膨張係数が違うためにNi-Fe超薄膜の初期成長過程での結晶粒の成長モードが異なっていることによる。また、ダンピング定数と結晶粒(膜面及び膜厚方向)の大きさとの間にに相関関係があることがわかった。 ・高い飽和磁化を有するFe-Co 超薄膜のダンピング定数に着目し、Co組成を30at.%から50at.%まで変化させたところ,Co組成40at.%を境にダンピング定数の値が大きく変化する(40at.%よりもCo組成の少ない領域では低く、多い領域では高くなっている)ことがわかった。この組成での変化は磁気ひずみの変化に対応しているものと考えらえる。また、共鳴周波数はNi-FeやFe-Si軟磁性膜に比べて高く、その線幅は他の軟磁性膜に比べて幅広く、5GHz以上の高周波帯域で磁界ノイズ抑制が可能であることを示唆している。 ・Fe-Si二元合金膜のスピンダイナミクスに関しては、ダンピング定数と磁気ひずみはSi組成の増加とともにわずかに増加し、それらのパラメータに相関があることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は高い飽和磁化を有するFe-Co合金のスピンダイナミクスを、軟磁性薄膜とは別に新たな材料として検討した。また、課題であったスピンダイナミクスと結晶との関連性を明確にできた。これらの結果は最終年度のスピンダイナミクスに基づく磁性材料指針をまとめるうえで重要な結果となっているからである。
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今後の研究の推進方策 |
今年度計画当初を予定していた「第三元素を添加した合金薄膜のスピンダイナミクスと他の磁気パラメータとの相関関係と、メカニズム解明」に関しては、超薄膜領域での課題をこなしたことにより遅れているものの、すでに添加する第三元素を取捨選択しており、選択した元素を添加したFe-Si合金に関して本課題を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画通り予算執行を行ってきたが、最終額の確定の際にわずかに余剰金が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度生じた余剰金については、次年度速やかに物品費として使用する計画である。
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