差周波混合法によるテラヘルツ電磁波発生において、励起子共鳴効果を明らかにすることを目的に研究を行った。試料にはGaAs/AlAs多重量子井戸を用いており、量子井戸では量子閉じ込め効果により重い正孔と軽い正孔が分裂している。この分裂した正孔と電子による励起子と連続波レーザーとの共鳴効果に注目した。 連続波で重い正孔励起子と軽い正孔励起子を励起するために、2つの波長可変Ti:sapphireレーザーを連続波モードで使用した。なお試料にはシェフィールド大学で分子線エピタキシー法により作製されたGaAs/AlAs多重量子井戸を用いた。 二つの連続波レーザーを励起子エネルギーに近い850 nm近傍で様々に波長を変えて発生するテラヘルツ電磁波の強度を測定した。当初、試料表面のp型層によるテラヘルツ電磁波の吸収のために出力が全く得られなかったが、p型層を取り除くことによって、数nWレベルのテラヘルツ電磁波の出力を確認できた。 不均一広がり幅の範囲内で重い正孔励起子を励起する、つまり異なる量子井戸の重い正孔励起子を励起した場合、軽い正孔励起子を励起した場合、そして同一の量子井戸の重い正孔励起子と軽い正孔励起子を同時に励起した場合について現状ではわずかな変化しか観測できなかったが、これは試料に照射するレーザーの偏光方向を変えることで変化することが分かった。特に、異なる空間の励起子を励起した場合と同一空間の励起子を励起した場合では、偏光依存性が異なることが分かった。これらの結果から、単焦点レンズでレーザー光を集光していることと、電界等を印加していないこと等を考慮すると、今後、集光系や試料構造を最適化することで、高強度な連続波テラヘルツ電磁波を得ることが可能であることを示していると考えられる。
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