研究課題/領域番号 |
26289088
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
小島 磨 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00415845)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 励起子 / テラヘルツ電磁波 / 差周波混合 / 非線形光学効果 |
研究実績の概要 |
二つの連続波レーザーを半導体結晶に照射することで得られる差周波混合による連続波テラヘルツ電磁波について、励起子に対する摂動効果を明らかにすることを目的に研究を行った。試料にはシェフィールド大学で分子線エピタキシー法により作製したGaAs/AlAs多重量子井戸を用いた。なお、この試料はpinダイオード構造となっており、将来的に電界を印加した測定ができるようにしている。励起光源には二つの波長可変Ti:sapphireレーザーを連続波モードで使用した。また、測定は室温で行っている。 前年度に励起子共鳴効果が存在することを示したので、昨年度は磁場を印加した条件下での測定を行った。上記の多重量子井戸試料を、表面磁束密度が0.5テスラの永久磁石の上に設置し、照射するレーザー光の強度などを様々に変えて測定を行った。磁場を印加することで、電子と正孔が量子井戸面内で反対方向に分離するため、分極の方向を面内方向に向けることができ、光電場との結合効率を高めることができると考え、また、この分離に伴う電子と正孔の包絡波動関数の非対称化による二次の非線形光学効果の増加も期待できると考えた。 磁場を印加した場合と印加していない場合での測定結果を比較すると、テラヘルツ電磁波強度の励起光強度依存性に違いが生じたがその差はわずかであり、想定していたほどのテラヘルツ電磁波強度の増強が得られなかった。これは、磁場が摂動としては小さいことに起因すると考えられ、むしろGaAs井戸層とAlAs障壁層との間の界面における層厚の原子層厚さオーダーでの揺らぎが二次の非線形光学効果に寄与していると考えられ、今後は電界などより大きな摂動を加えることを予定している。 その他、本課題の中心である量子ビートの生成について、数値計算を行い適切な励起条件(励起エネルギー)に関する検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
摂動の効果について明らかにすることができたとともに、今後の高強度化に向けた知見を得られたと考えている。また、同時に行っているパルスを使った実験結果もテラヘルツ電磁波の高強度化に向けた知見になると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は電界効果を明らかにするとともに、試料構造のさらなる最適化や励起条件の詳細を明らかにしていくことで、将来的な周波数可変のテラヘルツ電磁波源の作製に向けた知見を得る。
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