研究課題/領域番号 |
26289090
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
王 冬 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (10419616)
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研究分担者 |
中島 寛 九州大学, 産学連携センター, 教授 (70172301)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Ge光素子 / CMOS / 電子・電気材料 / 金属/半導体コンタクト / 局所歪み |
研究実績の概要 |
H27年度の研究成果は以下の通りである。 (1) 金属-Ge-金属(MGeM)素子の試作に於いて、金属コンタクトの形成法を変更し、MGeM素子の発光・受光特性の改善を図った。HfGeに代わるPtGe/Geコンタクトの形成プロセスを確立した。透過電子顕微鏡の観察によって、厚さ20 nmのPt堆積に対して、PtGe層の厚さは60 nmであることが分かった。また、正孔障壁高さが-0.01 eVと極めて低いことが分かった。この変更により、発光強度が約5倍増強し、暗電流が約8倍低減した。更に、寄生抵抗の低いPtGeの使用により、基板加熱に伴うピーク位置シフトが著しく減少した。 (2) 表面パッシベーション方法の変更によりMGeM素子の発光・受光特性を改善した。高品質なパッシベーション膜の形成方法として、Bi-Layer Passivation (BLP)法を導入した。深い準位過渡分光法によってパッシベーション膜とGeの界面準位密度を評価し、BLP法では界面準位密度が低減すること、を確認した。結果として、これまで用いてきたECR法と比べて、BLP法で作製した素子は発光強度が約1.6倍増加し、暗電流が約1.5倍低減した。PtGe/GeコンタクトとBLP法を併用することにより、MGeM素子の発光強度が約8倍増加し、暗電流が10倍以上低減し、受光感度が約1.6倍増加した。 (3) MGeM素子の発光機構の解明を更に深化させた。TiN/Ge/TiN構造の対称MGeM素子を作製して無発光を確認すると共に、非対称構造による少数キャリア注入の有効性を実証した。発光強度の発光面積依存性を調査し、電極間Ge面から均一に発光していることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の当初目標は、受光素子の暗電流:1桁の低減、発光素子の直接遷移発光効率:10 倍の向上、波長1.55μm 光に対する1 V での受光感度:0.4 A/W 以上、帯域幅:20 Gbs 以上、とした。H27年度時点で、受光素子の暗電流が1桁以上低減、発光素子の直接遷移発光効率が約8 倍向上、波長1.55μm 光に対する1 V での受光感度は0.7 A/W以上、の結果を得ている。実験装置の整備が遅れているため、高周波数特性の測定が遅延しているが、直流性能は当初目標を上回る結果を得ている。以上より、研究は全体的に順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
H28年度は下記の研究計画を実施する。 (1) 局所歪みの導入とその適正化:発光素子では、1.7μm以下の波長が必要なので、0.5%の歪みを目標とする。受光素子では、0.8%の歪みを目標とする。Ge光素子表面に形成した保護膜上にSiN膜を堆積し、受光・発光部に誘起される局所歪みと欠陥を顕微ラマンと顕微PLで評価する。局所歪みの導入と適正化による発光・受光効率の向上を確認する。 (2) 非対称MGeM素子の高周波特性評価:コンタクト形成、保護膜形成、局所歪み導入、基板の不純物濃度を適正化して試作したMGeM素子の直流・高周波特性を評価し、受光・発光性能を明確化する。評価結果を基に、素子寸法・形状の適正化を図る。 (3) H28年度にGOI基板の作製に取り組む。GOI基板の作製技術が確立した後、GOI基板上へ非対称MGeM素子を試作し、電気特性、発光・受光の直流・高周波特性等を評価し、より高性能を実現する。
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備考 |
http://www.astec.kyushu-u.ac.jp/nakasima/naka_home.htm
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