研究課題/領域番号 |
26289094
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
多田 和也 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90305681)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 有機薄膜太陽電池 / 導電性高分子 / 無修飾フラーレン / 非ハロゲン系溶媒 |
研究実績の概要 |
低コストで環境にやさしい新型太陽電池の一種として注目を集めている,導電性高分子/フラーレン複合体を用いた塗布型バルクヘテロジャンクション有機薄膜太陽電池において,本課題では,従来の常識を覆す,研究期間内に10%程度のパワー変換効率を達成することで「無修飾フラーレンを用いた塗布型有機薄膜太陽電池」が画期的な低環境負荷・低コスト型太陽電池となりうることを示すとともに,有機薄膜太陽電池におけるフラーレン類の「真の原点」の樹立に資することを目指して研究を進めている。 本年度は初年度ということもあり,本科研費で購入した原子間力顕微鏡と分光感度特性測定装置をはじめとする諸機器のセットアップと測定用プログラムの作製に大きな時間が取られたが,具体的な研究成果として,以下の事項について論文発表を行った。 ①科研費交付前に発表した研究成果として,低エネルギーギャップ高分子であるPTB7と無修飾フラーレンであるC70とのバルクヘテロジャンクション太陽電池において,エネルギー変換効率が3.0%という結果を得ていたが,この系に新たに共役電解質高分子であるPFN層を陰極側に挿入することで,4%以上のエネルギー変換効率を得ることができた。 ②さらに,上記の素子を化学修飾したフラーレンC70-PCBMとPTB7から成る素子と比較したところ,C70-PCBMを用いたものではわずか80℃という温度の熱アニーリングで性能が急速に劣化したのに対し,無修飾フラーレンを用いたものでは,160℃までの熱アニーリングにより特性が向上し,耐熱性が極めて高いことが分かった。 ③材料のバラつきの抑制や精製などに有利ではあるものの,製膜性に劣ると考えられる低分子ドナー材料(p-DTS(FBTTh2)2) が,無修飾フラーレン(C70)と組み合わせてバルクヘテロジャンクション太陽電池とできることを,初めて実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は初年度ということもあり,本科研費で購入した原子間力顕微鏡と分光感度特性測定装置をはじめとする諸機器のセットアップと測定用プログラムの作製に大きな時間が取られた。特に予想外であったのは,これらの機器の発注から納品まで約半年を要したことである。 しかしながら,具体的な研究成果として,エネルギー変換効率の大幅な引き上げを含む3件の論文発表を行うことができ,さらに2件の論文が掲載予定となっている。後者の内の1件は,機器の納品などを待っている間に作成した,少し変わった形状(S字カーブ)太陽電池の電流-電圧特性のフィッティングを行うプログラムを活用したもので,当該プログラム(Excelマクロ)は誰にでも利用できるように,論文誌のAdditional Informationとして公開されることになっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方針としては,PTB7よりも大きなエネルギー変換効率をもたらすと考えられる,PTB7-Thと称する導電性高分子の活用による,変換効率向上を目指す。 また,低照度下の特性についても調べていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
原子間力顕微鏡と分光感度特性測定装置の機器の発注から納品まで約半年を要したため,本格的な実験研究を始めるのが少し遅れている。そのため,試薬の発注などが遅れているためである。
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次年度使用額の使用計画 |
太陽電池用導電性高分子やフラーレンの購入に充てるほか,効率的な実験を行うための機器の整備などに使用する計画である。
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