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2016 年度 実績報告書

GaN系HEMTと関連素子のピエゾ電界効果の解明と表面準位の新評価法

研究課題

研究課題/領域番号 26289095
研究機関豊田工業大学

研究代表者

榊 裕之  豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 学長 (90013226)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2018-03-31
キーワードGaN / HEMT / ピエゾ電界 / 表面準位 / 電界効果トランジスタ
研究実績の概要

GaN系HEMTは、高周波特性と耐圧特性に優れた高速パワー素子として発展が期待されている。本素子はAlGaN層とGaN層を重ねた二層ヘテロ構造を持つが、各層の表面に、結晶構造に起因する自発分極電荷が生じ、同時に、両者の格子定数の違いに伴う歪みの作用で、ピエゾ分極電荷も誘起されることが知られている。また、各層の表面には表面準位が存在し、特性に影響を与えている。本研究では、GaN系とGaAs系のHEMT素子を短冊状に成形し、弓型に変形させた時の素子の電気抵抗の変化を系統的に計測・解析することで、ピエゾ電界の物理と表面準位に関し、以下の知見を得てきた。
1.歪みによるピエゾ電界は伝導層内の電子の濃度を変えるだけでなく、障壁層内の電子濃度も変えることを明らかした。
2.また、ピエゾ電界は、各層の電子濃度を変えるだけでなく、移動度も変えることを明らかにした。特に、低温では、界面凹凸散乱の頻度に影響することを見出した。
3.GaAs(100)面上のHEMTでは、結晶構造の対称性からピエゾ効果は生じないとされたが、弓型変形で、対称性が崩れ、これが生じることを示した。
さらに、素子表面に金属を堆積して表面電荷の増減を遮蔽した場合と素子表面を裸に保つか絶縁膜を堆積した場合について、ピエゾ抵抗効果の違いを計測し、両者の違いを解析することにより、表面準位の面密度が推定できる見通しも得ている。これらの知見を基に、ピエゾ電界効果の物理をより詳しく明らかにする。また、ピエゾ抵抗効果をより大きくする構造を設計・試作し、センサー応用の可能性を明らかにする。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究において、実験試料を作成するための結晶成長とデバイスプロセスならびに特性計測などに関し、中核的な役割を果してきた共同研究者(大森雅登)が、豊田工業大学から名古屋大学に移籍した。これに伴い、移籍先における職務に対応するために、割ける時間が大幅に減少し、研究の進捗に停滞が生じることとなった。
また、試料の作成と計測に用いていた実験室スペースも、キャンパス刷新計画の影響で、取壊しの上、刷新されることになり、遅れが生じることとなった。幸い、新実験室スペースの再整備は完了しており、今後、研究の遅れを取り戻す環境が整いつつある。

今後の研究の推進方策

当初の研究計画に従い、まず、サファイア基板上およびシリコン基板上に形成されたGaN系HEMTを対象に、AlGaN/GaNヘテロ構造の各層の表面に生じる自発分極電荷とピエゾ分極電荷の定量評価を進める。特に、短冊状に成形した素子を弓型に変形させた時、素子の電気抵抗の変化だけでなく、電子の濃度や移動度を独立に計測・解析することにより、ピエゾ電界効果の物理的な理解を深める。
GaAs系のHEMTやInGaAs系のHEMTについても、同様のピエゾ抵抗計測を行い、その解析から、これらの系におけるピエゾ抵抗効果の物理機構を明らかにする。特に、(100)面上に形成した素子を対象に、外部歪みに起因する対称性の消失によるピエゾ抵抗効果の物理を明らかにする。また、AlGaAs層とGaAs層を積層化した素子において、ピエゾ電界の作用で、電子の空間分布がどのように変化するかも調べ、ピエゾ抵抗にどう影響するかを明らかにする。
さらに、これらのHEMT素子表面に、ゲート電極のように、金属膜を堆積し、表面電荷の変化を遮蔽できる場合と素子表面に絶縁膜を堆積し、遮蔽が困難な場合について、ピエゾ抵抗効果を計測・解析し、表面準位の定量評価が可能なことを実証する。
これらの知見を基に、ピエゾ電界効果、特に、ピエゾ抵抗効果をより大きくする構造を設計・試作し、センサー応用の可能性を明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

本研究において中核的な役割を果してきた共同研究者の移籍、および実験室スペースの取壊しと再整備に伴い、研究の進捗に停滞が生じたため。

次年度使用額の使用計画

前項に記した通り、ピエゾ電界効果、特に、ピエゾ抵抗効果をより大きくする構造の設計・試作に用いる予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Excitation power dependence of photoluminescence spectra of GaSb type-II quantum dots in GaAs grown by droplet epitaxy2016

    • 著者名/発表者名
      T. Kawazu, T. Noda, Y. Sakuma and H. Sakaki
    • 雑誌名

      AIP Advances

      巻: 6 ページ: 045312-1-7

    • DOI

      10.1063/1.4947464

    • 査読あり
  • [雑誌論文] GaAs-based triangular barrier photodiodes with embedded type-II GaSb quantum dots2016

    • 著者名/発表者名
      P. Vitushinskiy, M. Ohmori, T. Kuroda, T. Noda, T. Kawazu and H. Sakaki
    • 雑誌名

      Appl. Phys. Express

      巻: 9 ページ: 052002-1-4

    • DOI

      10.7567/APEX.9.052002

    • 査読あり
  • [雑誌論文] InGaAs triangular barrier photodiodes for high-responsivity detection of near-infrared light2016

    • 著者名/発表者名
      K. Sugimura, M. Ohmori, T. Noda, T. Kojima, S. Kado, P. Vitushinskiy, N. Iwata and H. Sakaki
    • 雑誌名

      Appl. Phys. Express

      巻: 9 ページ: 062101-1-4

    • DOI

      10.7567/APEX.9.062101

    • 査読あり
  • [学会発表] ナノギャップ電極と結合した単一自己組織化InSb量子ドットにおける電気伝導特性2016

    • 著者名/発表者名
      柴田憲治、大森雅登、榊 裕之、平川一彦
    • 学会等名
      第77回応用物理学会秋季学術講演会
    • 発表場所
      朱鷺メッセ、新潟県新潟市
    • 年月日
      2016-09-13 – 2016-09-16
  • [学会発表] Effects of Ga deposition rate and antimony flux on morphology of GaSb quantum dots formed on GaAs2016

    • 著者名/発表者名
      T. Kawazu, T. Noda, Y. Sakuma and H. Sakaki
    • 学会等名
      The 43rd International Symposium on Compound Semiconductor
    • 発表場所
      International Conference Center, Toyama, Japan
    • 年月日
      2016-06-26 – 2016-06-30
    • 国際学会

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公開日: 2018-01-16  

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