研究課題/領域番号 |
26289099
|
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
須田 良幸 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10226582)
|
研究分担者 |
塚本 貴広 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50640942)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 半導体メモリ / 不揮発性メモリ / 抵抗変化型メモリ / PNダイオード / クロスポイント型配列 / SiC / 界面電位 |
研究実績の概要 |
本研究は研究代表者が初めて提案実証した、現在の3端子メモリより高密度化が可能な2端子で動作し、且つ、メモリ素子にダイオード特性が要請される理論的に最密なクロスポイント配列が実現可能な、ダイオード特性とメモリ機能を合わせ持つ、新概念の「pnメモリダイオード」について、動作原理の探索と、材料と構造と製造プロセスとの相関の解析と最適化に関する研究を進めた。このダイオードはAu/p-CuOx/SiCxOy/n-SiC/n-Siからなり、pn接合面に電子捕獲層SiCxOyが形成してある。これまで、SiC成膜を840℃で、SiCxOyをSiCの800℃の熱酸化で、CuOxを200℃の熱酸化で形成してきたが、26年度にn-SiCの室温スパッタ成膜でも、pnダイオードを形成できることを明らかにした。これにより、全製造プロセスを200℃以下で製造することを可能とした。SiCは室温成膜でアモルファス状態に遷移したがpnダイオード特性を示した。また、特にSiO成分がメモリ特性に有効であることが判った。得られたメモリは高温製造のメモリと同様にアクセプタ型欠陥での電子の充放電によりメモリ効果を示し、良好なエンヂュランス特性を示した。さらに3D実装の為の金属配線上の形成が可能であることを示した。さらに、電子捕獲層の材料と特性との関係を探索し、SiCxOyの替わりにAlOxを用いてメモリ特性を検討した。その結果、スイッチング電圧を、SiCxOyを用いた場合の5-6Vから3-4Vに低電圧化出来ることを示した。特に、スイッチング電圧が4Vのメモリでは10の5乗程度の安定したエンデュランス特性が得られた。このスイッチング電圧の差は電子捕獲層の捕獲準位のポテンシャル位置が関与していると考えられた。以上、①製造プロセスの低温化、②金属配線上への製造、③スイッチング電圧の低電圧化の成果が得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
26年度の主目標は、①材料と構造とメモリ特性の最適化のために、従来のSiCxOyと異なる材料の電子捕獲層を用いて、メモリ特性と動作原理について検討すること、②理論的に最密なクロスポイント配列のために金属配線間に本メモリを形成する方法を検討すること、③シミュレーションを用いて動作原理を実験と相補的に検討することであるが、①電子捕獲層としてAlOxを用いて、従来のSiCxOyを用いた場合と比較して、原理・メモリ特性を検討し、解析した。さらに、AlOxを用いて、スイッチング電圧の低電圧化を達成した。②金属配線上へのメモリ製造を試み、Si基板上に形成した場合と同様な基本的メモリ特性が得られた。③シミュレーションとの比較では原理的な動作について検討した。さらに、④従来の840℃製造プロセスに替わり、幅広くLSI製造プロセスとの整合性が期待される200℃以下の低温化製造プロセスを提示した。以上の実績により、順調に進展していると評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
26年度に検討した事項を基に、引き続き、材料、構造、製造プロセスの最適化を進め、さらに、小規模メモリアレイ製造を進める。具体的には、電子捕獲層の材料と構造とメモリ特性との相関の解析、および、シミュレーション解析を実験と相補的に進める。電子捕獲層として、前年度までのSiCxOy電子捕獲層、AlOx電子捕獲層に加えて、SiNx捕獲層をリアクティブスパッタ法を用いて導入し、材料構造と作成条件とメモリ効果との相関を調べ、これらの電子捕獲層材料と物性とメモリ特性との相関の解析を進めて、材料と構造と製造プロセスの最適化を進める。また、電子捕獲層の位置をn型半導体中またはp型半導体中に形成したメモリ構造を実験的に検討し、電子捕獲層のメモリ効果に与える効果を調べ、本メモリダイオードへの適応性を評価する。また、小規模メモリアレイを製造するための基本となる要素形成技術を検討して、少規模メモリアレイを作製し、集積回路形成のための視点から本メモリの電気的特性と製造プロセスの有効な条件を検討評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
消耗品について、購入予定した金額より18,180円分低減が発生した。
|
次年度使用額の使用計画 |
消耗品として、スパッタターゲット+Si基板+高純度ガス+電子材料(スパッターターゲット以外の蒸着材料など)+電子部品(機能維持・交換・試作用)+真空部品(交換バルブ、配管、ガスケット、など)+フォトマスク製造に用いる。さらに、国内学会発表経費、外国国際会議発表経費、英文校閲謝金、その他として論文別刷りまたは成果報告用印刷費+論文投稿費に用いる。
|