研究課題/領域番号 |
26289100
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
本城 和彦 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (90334573)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マイクロ波 / ミリ波 / 電力増幅器 / 線形性 / 高効率 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、先ずMMICアレイ化ドハティ増幅器を安定に動作させるには、ドハティ増幅器に生ずる複数の閉回路に関して、それぞれ安定性を確保することが特に重要であることを見出した。この安定性は動作基本周波数の安定性はもちろんのこと、非線形性と帰還回路から生ずる分数調波を介したループ発振に関するすることが重要であることを理論的ならびに実験的に示し、特に2分の1分数調波のループ利得とループ位相の制御が重要であることを示した。
次に、この安定化制御が達成できる制御/バイアス供給共用回路を考案し、具体的に6GHz帯pHEMT MMICドハティ増幅器設計に適用した結果、試作MMICドハティ増幅器において、6.1GHz~6.8GHzと広帯域に亘って10dB入力バックオフ時の付加電力効率40%という良好なドハティ増幅特性が達成された。この帯域は、安定化回路を備えないとときに比べて2倍広帯域化されていることも実験により確認されている。
さらに、アレイ化カスコードドハティ増幅器の基本増幅セルとなる独立バイアス型3スタックカスコードHBT-MMIC増幅セルと独立バイアス型3スタックカスコードGaNHEMT-MMIC増幅セルを設計試作し、基本増幅特性を実験により確認した。この結果、ともにアレイ化ドハティ増幅器の安定動作に必須な逆方法アイソレーションが大きく改善され、特にHBT型では最大-90dBが得られた。1.6GHzにおける基本増幅性能はHBT型では最大付加電力効率52%、GaNHEMT型では最大付加電力効率48%が得られた。また独立バイアス型カスコード増幅器の特徴である電力効率特性,ひずみ特性をそれぞれ独立に調整できることもシミュレーションと並んで実験的にも明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アレイ化カスコード増幅器を実際に実現する上で重要となる回路安定性の課題に関して大きな進展があった。特に分数調波を介した不安定性改善に関して重要な知見が得られ、これを理論的および実験的に実証した。この成果を用いて6GHz帯MMICドハティ増幅器の2倍の動作広帯域化が達成され、本研究テーマであるアレイ化カスコードドハティ増幅器だけでなく、一般のドハティ増幅器に高性能化にも貢献できる見通しとなった。
アレイ化構成に関しては、化合物半導体ファンドリーサービスを用いて、独立バイアス型3スタックHBT MMIC増幅セルと独立バイアス型3スタックGaNHEMT MMIC増幅セルの試作が完了し、それぞれ、良好な増幅特性が実験的に確認された。電力効率はシミュレーションで得られたものよりやや低いが、上記回路安定化回路の研究成果と合わせて今後のアレイ化カスコード増幅器の研究推進が順調に行える。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度までにアレイ化カスコード増幅器を構成する上で重要となる動作安定化に関して知見が得られ、実験的にもその有効性が確認できた。さらにアレイ化カスコード増幅器を構成する上で必要なMMIC増幅器セルをHBT型とGaNHEMT型の両方で設計試作し、良好な増幅動作を実験的に確認できた。以上の二つの成果をベースにして、平成28年度はアレイ化カスコード増幅回路の動作実験結果とシミュレーション結果との詳細な比較検討を行う予定であり、新しいマイクロ波増幅器設計法を開拓できるように研究を推進する。
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