独立バイアス型3スタック構造GaN-HEMT MMICを設計し、ファンドリーサービスを用いて試作した.この試作チップを評価治具に実装して基本動作試験を実施したところ、第一ゲートバイアスは、付加電力効率(PAE),3次相互変調ひずみ(IMD3),および出力電力の三つの評価指標に大きく関与する一方で,第三ゲートバイアスはIMD3のみに関与すること、さらに第一ドレーン電圧はIMD3には関与しないが、PAEと出力電力に大きく影響を与えることなどが判明し,本提案の独立バイアス型3スタック構造が有効であることが確認された.この構造で1.6GHz帯電力増幅器を試作したところ,1Wの出力,48%のPAE,20dBの電力利得,5dB出力バックオフ時に-30dBcの良好なIMD3を確認した. このような基本増幅器セルを並列させ,一方をキャリア増幅器とし、もう一方をピーク増幅器として動作させるドハティ増幅器の動作をハーモニックバランスシミュレーションにより確認した.この結果,3スタックGaN-HEMT単体増幅器構成に比べて,複数の3スタックGaN-HEMT単体増幅器を用いたドハティ増幅器構成は出力バックオフが5dB以上の領域で,優位なPAE値を保ち、本提案の妥当性が実証された. さらに、複数の単体増幅器を切り替える高耐圧GaN-HEMTスイッチMMICの試作を行い良好なスイッチ特性を示した.本研究で得られた,非対称な複数増幅器の結合技術は、第五世代携帯電話システムで多用する同時増幅マルチバンド増幅器の動作安定性確保ならびにひずみ特性低減化にも貢献した.
|