本研究では,電波と光波の境界領域の周波数を有するテラヘルツデバイスを小型集積化するための基盤技術として,微細構造フォトニック結晶に着目し,これまでに世界最小の伝搬損失の実現してきた伝送路の研究を発展させるとともに,分合波および自由空間との入出力といった機能を集積化したテラヘルツ波平面回路の実現を目指した.
今年度は昨年度までに引き続き,フォトニック結晶の基本構造として,フォトニック結晶の格子定数を240 μmとした2 次元円孔三角格子を高抵抗シリコンウエハへと形成した構造を採用した.昨年度までに実現してきた伝送線路間の方向性結合のメカニズムを利用する分合波機能と,1次元周期構造にて自由空間との入出力機能を実現するフォトニックカプラとの集積化を試みた.作製したサンプルにテラヘルツ送信器,受信器となる共鳴トンネルダイオードをハイブリッド集積化し,フォトニックカプラから自由空間に出力される0.35 THzのテラヘルツ波をホーンアンテナとスペクトラムアナライザで測定することに成功した.一方,ホーンアンテナから送信された0.33 THzのテラヘルツ波をフォトニックカプラに入力し,分合波された信号を共鳴トンネルダイオードで受信して,1.5 Gbit/sの伝送アイパターンを観察するにも成功した.以上により,フォトニック結晶を基盤とする分合波および自由空間との入出力といった所期の機能を集積化するというテラヘルツ波平面回路の概念実証に成功した.
また,今後の大容量周波数多重通信に向けて,周波数チャネルの多重化および,合分波動作の帯域を拡大可能にする構造の設計を行い,シミュレーションで動作を確認した.
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