平成29年度は、本補助事業で研究開発を進めてきた技術である(a)半導体集積回路チップとクロマトグラフィペーパーを統合したバイオケミカルセンサー技術、(b)クロマトグラフィペーパーを基板とした低価格単回使用バイオセンサー技術、の完成度向上と応用拡大に主に取り組んだ。さらに平成29年度より着手しはじめた(c)インピーダンス方式のセンシング技術についての基礎検討を進めた。(a)に関しては、平成28年度までに蓄積した成果の完成度を高め、CMOS集積回路化された電流検出回路・チップ上に形成されたカーボン電極・溶液検体を吸引し酵素化学反応を発生させるペーパー流路、の三要素を統合したセンサーによるグルコース検出についてまとめ、その成果を国際学会にて発表した。また、(b)に関しては、クロマトグラフィペーパーの多孔質性を生かしたガスセンサーの性能向上や、ペーパーの薄さを生かしたレドックスサイクリング現象の実証、並びにペーパー上に鉛筆で直接描画されたカーボン電極によるpHセンシングの実証を行い、国際学会および英語学術論文誌にて発表を行った。さらに、ペーパーバイオセンサーをスマートフォンに接続してバイオセンシングを行う技術に関する成果をまとめた招待論文発表および書籍分筆を行った。(c)に関しては、CMOS集積回路チップ上のボンディングパッドを後処理なく電極として用いたインピーダンスセンサー実現可能性を模索し、解析式・コンピューターシミュレーションによる検討や緩衝液を用いた実験を行い、分子計測および生細胞計測への応用について検討を行った。
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