研究課題/領域番号 |
26289112
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
重藤 暁津 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 主幹研究員 (70469758)
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研究分担者 |
水野 潤 早稲田大学, 付置研究所, 教授 (60386737)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 低温大気圧接合 / ハイブリッド接合 / パワーエレクトロニクス / 真空紫外光 / 実装 |
研究実績の概要 |
本研究では,パワーエレクトロニクスデバイスの構築に不可欠な“ワイドバンドギャップ半導体基板と金属薄膜,可撓性透明基板の混載構造”を低温大気圧接合手法で実現した.材料としてGaN, SiC, ポリジメチルシロキサン(PDMS),ポリイミド(PI), Cu, Tiを選定し,これらの間の組み合わせを問わない接合を可能にした.具体的には,1) 架橋性を発現する水やアルコールなどの分子を含有する高純度窒素雰囲気で真空紫外光(VUV)を照射し,2) VUV光が有するフォトンエネルギならびに架橋物質がVUVによって解離するラジカル種の作用による表面清浄化,酸化物還元,架橋層形成効果を一括獲得し,3) 150℃程度の低温加熱により化学反応を促進することで強固な結合を得た.
本接合手法のプロセス条件を最適化するために,X線光電子分光計(XPS)などを用いて表面改質条件と各材料表面化学結合状態の関連を調査した.その結果,架橋層の厚さは導入した架橋性物質の分子数(体積湿度から換算)とVUV照射時間の積で記述できることが明らかになり,パラメタ制御が容易であることが示された.導入物質が水分子の場合は各材料の水和物または親水性官能基が架橋となり,加熱時の脱水縮合反応により強固な結合が得られる.水和物架橋による接合は各種金属,半導体,ガラス系材料の界面に有用である.その他有機材料についてはアルコールによる架橋形成が特に有効で,接合界面でのベンゼン環数の増加による強靭化が見込める.
また,本手法の実用可能性を検討するために,当初はGaNとSiCの接合体を利用した発光素子を試作する予定であったが,検討の過程においてより産業応用性の高いGaNとSi基板の接合性が確認されたため,GaN - Si構造による試作に方針を変更した.これについては1年間の研究期間延長が承認されている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,1) 架橋性物質含有雰囲気VUV照射手法(Vapor-Assisted手法)が各材料の表面化学結合状態に及ぼす影響の調査,2) 接合界面微細構造解析,3) 実働性評価,の3つの主要項目から成る.
このうち1と2については,各材料についての適正なプロセスウィンドウが明らかになり,その結果として材料の組み合わせを問わない強固な結合が得られている,したがって,当初計画どおりに検討が終了したと言える.また,研究計画時に想定していたSiCよりも産業応用性の高いSi基板への接合積層可能性が示されたことから,表界面解析に関する項目については当初の計画以上の進展が得られている.
3の応用可能性検討については,前項に記述した通り,Si基板を用いた実働デバイス製作に計画を変更したのでまだ完遂されていないが,設計に大きな変更はないため,遅延無く実行可能であると考える.これらを総合して,おおむね順調に進行していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
本計画については,まずSi基板を用いた実働デバイスを設計試作し,Vapor-assisted VUV接合手法によって創製されたハイブリッド接合体が,従来のものに遜色ない動作性を有することを実証する.また,これらの手法についての特許申請,論文発表を行う.
さらに,本研究をH29年度からの科研費基盤(A)に継続発展させ,ハイブリッド軽量構造材料のスマート化を実現する.移動体に用いられる有機構造材料と可撓性電子基板材料には共通したものが多いことに着眼し,ハイブリッド軽量構造材料に薄型電子基板群を内包させ,材料自体に電気的機能を持たせるための検討に,本研究で得られた低温大気圧接合による有機・無機ハイブリッド界面創製の知見を応用する.接合界面での特性・物性変化や信頼性劣化を最小限にするために,界面の化学的構造を強靭化する架橋形成プロセスを確立することを主眼とする.
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次年度使用額が生じた理由 |
当該研究遂行中に,当初企図していたGaNとSiC基板の低温大気圧接合のほかに,より産業応用性の高いSi基板への直接接合可能性を見出した.そのため,Si基板を用いた実働デバイスの設計試作を行い,動作検証をするために研究計画を一部変更したことが理由である.新しい研究計画実施ならびに成果公開,特許等申請のために1年間の期間延長を申請し,承認されている.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は,Si基板を用いた実働デバイスの制作費として用いる.デバイス製作のために申請者所属機関の共用設備部門において半導体微細加工装置を使用するための利用料と,消耗品費用に供する.
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