研究課題/領域番号 |
26289113
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
松川 貴 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノエレクトロニクス研究部門, 上級主任研究員 (70287986)
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研究分担者 |
柳 永勲 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノエレクトロニクス研究部門, 主任研究員 (90312610)
昌原 明植 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノエレクトロニクス研究部門, 研究グループ長 (50357993)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | テラヘルツ波 / FinFET / 半導体超微細化 / 先端機能デバイス |
研究実績の概要 |
本年度は、CMOS-FinFETによるテラヘルツ波放射の確認に向け、下記3項目につき研究を推進した。 (1) 安定した発振動作実現のためのFinFETゲート電極の最適化:CMOS FinFETのテラヘルツ波放射器への活用を念頭に、FinFETの低周波ノイズの低減技術の開発を行った。低周波ノイズは発振器の発振周波数安定性を劣化させるが、FinFETの特性ばらつき抑制に有効であることが確認されている非晶質金属ゲートを導入することで、ノイズレベルを劇的に低減できることを発見した。これにより達成されたノイズレベルは、バルクプレーナMOSFET等の他のトランジスタ構造におけるこれまでの報告例を大きく下回り、FinFETをテラヘルツ放射器を活用する新たなメリットを示した。 (2) テラヘルツ波発生のための3段リング発振器の基本設計:既存のFinFETの実測特性を、産総研において開発されたFinFETコンパクトモデルにより再現した。また、電子ビームリソグラフィーにより形成可能な配線寸法を元に見積もられた寄生容量を考慮して、コンパクトモデルによる発振回路のシミュレーションを行った。その結果、ゲート長50nmのCMOS構成で、基本発振周波数60GHz、3倍高調波で180GHzの達成が見込まれた。上記回路条件を満たすマスク設計を完了した。 (3) CMOS-FinFETリング発振器の試作:上記のマスク設計完了を受け、CMOS-FinFETリング発振器の試作工程を開始した。FinFETの寄生抵抗ばらつきを抑制するためのドーピング条件最適化を目的に、単体トランジスタの試作も平行して行い、望ましいドーピング条件を決定した。本年度は、試作工程のうちゲートの加工まで完了し、平成27年度も引き続き試作工程を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初平成26年度中に、CMOS FinFETリング発振器の第1回目の試作完了を目指していた。発振器安定性に影響を与えるノイズが新規に取り組むべき課題として発生したため、年度初めはこの課題に注力することとなった。加えて、年度途中にプロセス評価装置(電子顕微鏡)の故障が発生したため、試作工程の進捗に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
当初は、平成26年度に試作完了したロットについて、周波数評価は多段(101段)のリング発振器のプローバ触針により、また3段リング発振器からの電磁波放射はショットキーダイオードディテクタによる準光学測定により、分けて評価することを予定していた。試作工程に遅れが生じていることも有り、平成27年度に導入する高周波発振器により可能となるヘテロダイン測定により、電磁波の放射の確認とその周波数の測定を合わせて行うこととし、試作回路の評価の効率化を図る。 これにより、当初予定通り平成27年度中に、ゲート長20nmクラスのFinFETを想定した発振器の設計と、試作着手まで行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定より試作工程に遅れが生じたため、試作に係る消耗品調達の一部を次年度に行うこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額相当分の消耗品(電子ビームレジスト、ガスボンベ等)を、年度明け早々に購入する予定。
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