研究課題/領域番号 |
26289116
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
松本 隆太郎 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (10334517)
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研究分担者 |
萩原 学 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80415728)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 秘密分散 / セキュアネットワーク符号化 / ハミング重み / 一般相対化ハミング重み / 一般相対化ランク重み / 線形符号 / 符号理論 |
研究実績の概要 |
情報セキュリティはますます社会的に重要になっているが、その中で秘密分散法やセキュアネットワーク符号化は、情報理論的な安全性を持つことやクラウドストレージの情報保護に応用できる点などで注目を集めている。最近我々を含む研究グループが上記の秘密分散法ならびにセキュアネットワーク符号化を符号理論の観点から統一的に説明・構成出来ること、秘密分散法の安全性は符号の相対一般化ハミング重み(RGHW)、セキュアネットワーク符号化の安全性は符号の相対一般化ランク重み(RGRW)で規定されることを明らかにした。そこで我々は第1年度で主に符号のRGRWについて検討し、第2年度で主に符号のRGHWについて検討することとした。 RGRWに関しては、ランク誤り訂正符号に関する文献調査を主に進め、ランク誤り通信路向け符号への応用、消失通信路向け符号への応用、ネットワーク符号への応用、などの知見を得た。その過程で、符号の実装等で基礎となる有限体の表現行列に関する簡単な構成方法を得た。 RGHWに関しては、まず符号長を大きくし符号の情報レートを固定したときに符号長で正規化したRGHWがどの程度大きくなりうるか検討し、既存の評価を改善し、国際会議ISIT2014で発表した。次に代数的符号の中でよく知られた符号のクラスである、一点代数幾何符号のRGHWを評価する手法を申請書に記載した海外研究協力者のOlav GeilとDiego Ruanoと共に提案し、この研究分野のトップジャーナルであるIEEE Transactions on Information Theoryに掲載した。またOlav Geilより秘密分散法の構成のためには符号のRGHWとその双対符号のRGHWを同時に評価する必要があることを指摘され、そのような評価を行い国際会議WCC 2015に投稿し採録通知を受け取った(発表は平成27年度)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した平成27年度の目標を本年度概ね達成したので、進捗状況は概ね順調だと判断した。平成26年度の目標は予定通り達成出来なかったので、平成27年度に行う。
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今後の研究の推進方策 |
与えられたメッセージ数に対してランク重みを最大にするGF(q)上の線形符号はMRD (maximum rank distance)符号と呼ばれ、n≦mのときMRD符号の構成法はよく知られており、 MRD 符号の対は与えられたメッセージ数に対して相対一般化ランク重みも最大にすることを研究代表者らは明らかにしている。一方、m<nのときに最高の安全性を持つコセット符号化は未解明であるため、以下の手順で明らかにする。既知の知見として、通常 GF(q)上の線形符号について定義されるランク重みを非線形符号に拡張して定義できること、ならびにGF(q0^n)上の長さ mのMRD符号の各符号語ベクトルをGF(q0)行列に展開したのち転置して得られる行列の集合をGF(q)上長さnの非線形符号(ただしGF(q0)に対しては線形)と見なすとメッセージ数に対してランク重みが最大になる符号(これもMRD 符号と呼ぶ)になることが知られている。この知見を活かして平成27年度は、(1)相対一般化ランク重みを非線形符号に拡張し、GF (q0)上の線形符号から構成されるコセット符号化のセキュアネットワーク符号化における漏洩情報量を拡張した相対一般化ランク重みで表現する、(2)m<nときのMRD 符号を元にして、拡張した相対一般化ランク重みを最大にするGF(q0)上の線形符号の組の構成方法を明らかにする。必要に応じて計算機を用いた虱潰し探索も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度の前半で研究が予想以上に進捗し国際会議発表や研究打ち合わせのための旅費がかさみ、26年度分の予算の多くを使いきったので、27年度予算の前倒し支給を申請した。そのあと26年度内にもともと招聘を予定していた海外研究協力者のDiego Ruanoの招聘費用として、東京工業大学内の国際交流を促進するための助成金に応募したところ採択されDiego Ruanoの招聘費用は科研費とは別の東京工業大学の費用により賄われたために、前倒し請求した予算が余った。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に使用できる予算は科研費応募時の計画と4万円しか違わないため、応募時の計画に沿って使用する。
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