研究課題/領域番号 |
26289123
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
長谷川 英之 東北大学, 医工学研究科, 准教授 (00344698)
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研究分担者 |
西條 芳文 東北大学, 医工学研究科, 教授 (00292277)
金井 浩 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10185895)
近藤 祐司 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20534431)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 超音波 / 高速イメージング / 高出力プローブ |
研究実績の概要 |
本研究者はこれまで,拡散超音波ビームを用いた超高速超音波イメージングを実現した.本研究では,拡散ビームを用いた際の音圧低下に対応するため,高出力超音波プローブの開発を行っている.本年度は,振動子材料や超音波音場に関する検討を行い,高出力アレイ型超音波プローブの仕様の決定およびプローブの試作を行った.高出力超音波プローブの仕様としては,心臓のイメージングを念頭に素子数96,素子ピッチ0.2 mm,超音波中心周波数約3 MHzと決定した.高出力化を行っても超音波音場特性(超音波断層像の空間分解能に対応)が劣化しないよう,素子のピッチは従来と同じ0.2 mmを採用した.また,本プローブは従来の診断用プローブより高出力で使用するため,従来よりも大きい熱の発生が想定される.そのため,空冷機構を採用することにより発熱量の増大に対応し,想定する超音波振幅,波連長,送信繰り返し周波数などの超音波照射条件下で安全基準である表面温度43℃以下を達成した.さらに,高出力超音波プローブを用いて超音波を送受信するためのシステムも必要となるため,多チャンネル超音波送受信システム用の高出力化ユニットの開発も行った.電源を強化することにより,従来の最大85 Vppの2倍である最大170 Vppの超音波励振信号を超音波プローブに印加することが可能となった.試作した高出力超音波プローブおよび高出力化ユニットを備えた超音波送受信システムを用いてイメージングを行うためには,送信音場制御用ソフトウエアおよび得られた受信超音波信号から超音波断層像を構築するためのビームフォーミングソフトウエアが必要であり,それらの構築も行った.研究を順調に遂行できたため,次年度の課題である超音波イメージングの高空間分解能化にも取り掛かることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の目標は,高出力アレイ型超音波プローブの開発および多チャンネル超音波送受信システムの高出力化であった.本年度,高出力アレイ型超音波プローブの試作を完了させるとともに,多チャンネル超音波送受信システムを高出力化するためのユニットの試作も完了させており,当初の目標を達成したと言える.さらに,次年度の研究課題である超音波イメージングの高空間分解能化手法の開発にも着手しており,当初計画よりも研究が進んでいると言える.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に製作した, 高出力アレイ型超音波プローブおよび多チャンネル高出力超音波送受信システムを用いて出力される音響出力を水中で超音波ハイドロホンを用いて測定し,所有する従来の超音波プローブに比べ高い出力が得られていることを確認するとともに,高出力超音波プローブの表面温度を熱電対もしくはサーモグラフィー等でモニタすることにより温度上昇を評価する.また,高出力アレイ型超音波プローブの送信音場特性に関する評価を行う.単素子ごとに送信される音場,多素子を用いて拡散波を送信した場合に形成される音場などについて,超音波ハイドロホンを用いて測定を行う.所望の音場を形成できることは,超高速超音波イメージングの高空間分解能・コントラスト化手法の開発を行うために必須である.超高速超音波イメージングでは,送信に非集束超音波ビームを用いるため,送信・受信ともに集束ビームを形成する従来のビームフォーミング手法に比べ空間分解能およびコントラストが劣化するという問題がある.本研究では,超高速超音波イメージングの空間分解能およびコントラストを従来のイメージング法と同等以上に向上させることを目指す.遅延和法により超音波アレイプローブの各素子で受信したエコー信号を合成する際,関心点からの散乱エコーの位相が揃うように整相処理が行われる.この際,実際に受信した散乱エコーが,関心点以外からの散乱波である場合,関心点と散乱点が一致する場合に比べ各素子で受信した信号間の相関が低下するなどの特性がある.本研究では,これらの特性を利用し,整相合成信号に重みを付ける(関心点からのエコーでない場合は重みが低下)ことにより空間分解能やコントラストの向上を試みる.また,各素子の信号を整相して合成する際に,各素子の信号に重みを付ける手法も検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度において,超音波音場や空間分解能の評価を行うための基礎実験系の構築に必要な水槽実験系部品や回路部品が必要となったため、高出力超音波プローブの実現に必要な仕様を絞り込むことで余剰金を確保した.
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度に開発した高出力超音波プローブの超音波音場評価,構築した超音波断層像の分解能評価などを行うための水槽基礎実験系の部品や回路部品の購入費として使用する.
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