研究課題/領域番号 |
26289123
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
長谷川 英之 富山大学, 大学院理工学研究部, 教授 (00344698)
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研究分担者 |
西條 芳文 東北大学, その他の研究科, 教授 (00292277)
金井 浩 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10185895)
近藤 祐司 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20534431)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 超音波 / 高速イメージング / 高出力プローブ |
研究実績の概要 |
本年度はまず,前年度に製作した高出力超音波プローブの動作確認を行った.金属平板に対する超音波送受信実験を行い,金属平板からの超音波反射波を測定したところ,所望の超音波送受信特性(中心周波数2.9 MHz,比帯域55.7%)が実現されていることが確認できた.また,高出力化した96チャンネル超音波送受信システムに接続して動作確認を行ったところ,高出力化前のプローブ印加電圧80 Vppの2倍にあたる160 Vppの電圧を印加しても超音波振動子が破損しないことを確認した.以上の基礎特性評価を行った上で,細径ワイヤーターゲットを用いて超音波音場の評価実験を行った.評価実験では,超音波振動子アレイの内部-30 mmの位置に存在する点音源からの超音波波面(球面拡散波)を,超音波振動子アレイを用いて実現するような超音波振動子の駆動タイミングを理論的に設定し,超音波送受信を行うことにより得られた受信信号から超音波断層像を構築した.その結果,対象として用いた細径ワイヤーターゲットが正しく結像され,理論通りに超音波音場が形成されていることが確認された. 本研究で使用する球面拡散波のような非集束ビームの場合,送信ビームの低指向性により空間分解能が,不要エコーの増加によりコントラストが劣化する.このような問題を解決するため,本研究では,受信信号をもとに適応的に超音波ビーム形成に関わるパラメータを更新する適応ビームフォーマの開発を行った.超音波プローブの各素子の指向性まで考慮して適応ビームフォーマに関する理論的検討を行い,計算機シミュレーションによる検討を行ったところ,従来法よりも高分解能・高コントラストを実現しながら,計算量を約1%に低減することに成功した.これは画期的な成果である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた,開発した高出力超音波プローブの動作確認および基礎特性評価を行い,当該プローブを用いた細径ワイヤターゲットの画像化に成功した.さらに,当初計画していた超音波断層像の空間分解能・コントラスト向上手法の開発にも成功し,その計算量も従来の約1%程度と大きく低減できたことから,当初の計画通り順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に開発して計算機シミュレーションによる評価を行った高空間分解能化・高コントラスト化手法(適応ビームフォーマ)について,超音波画像評価用ファントムを用いた評価実験を行い,現実の対象物に対して画像化が行えるかどうか検証を行う.ファントム内の細径ワイヤからのエコーの半値幅をもとに空間分解能を評価するとともに,ファントム内実質部の超音波画像輝度と,病変を模擬した無エコー部の輝度の比からコントラストを評価することにより従来のビームフォーミング手法との性能比較を行い,開発した手法の有効性を実際の実験により示す. また,超高速超音波イメージングによる心臓内血流計測法の開発を行う.本申請者はこれまでに,血球からの超音波エコーを超高速で描出することにより,血流動態を詳細に観察できることを示している.心臓は体深部に存在するため超音波の減衰が大きく,また,超高速心臓イメージングを実現するためには送信超音波音圧が低下する球面拡散ビームを用いる必要があるため,超音波散乱強度の小さい血球からの超音波エコーを描出することが難しい.送信超音波音圧は,球面拡散波の拡散角度を調整することにより制御可能であるため,描画範囲と超音波音圧とのトレードオフから最適な送信条件を検討する. 以上のように検討した超音波送信条件下で血流計測が行えることを示すために,超音波血流計測評価用ファントムを用いた評価実験を行う.本ファントムは,流路を生体模擬媒質で囲んだ構造となっており,流路内にポンプで流れを発生させる.流体としては,超音波散乱波が得られるよう,微小粒子を混入した模擬血液を用いる.このような模擬循環系を用いて微小粒子からの超音波散乱波を描出し,流体の動態を測定することができることを示す.以上の一連の実験をもとに,超高速超音波イメージングによる心臓内血流の可視化法として確立する.
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