研究課題/領域番号 |
26289136
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
河合 研至 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90224716)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 土木材料 / コンクリート / 重金属 / 環境影響評価 |
研究実績の概要 |
実験的検討として,コンクリートからの重金属溶出に関する検討を行い,あわせて,現状の環境影響評価における重金属類の取扱いについて把握したうえで,コンクリートの環境影響評価に対する重金属溶出量の導入手法に関する検討を行った. 実験的検討では,平成26年度から継続するタンクリーチング試験において,浸せき期間400日までの結果を得ている.平成26年度に得られた結果と傾向的には相違はないものの,カリウム,カルシウムの塩化物,硫酸塩の溶液を用いた一部の供試体について実施したEPMA分析結果では,表面から内部へ向かって拡散のように濃度が減少するものに加え,表面から内部へ向かって直線的に濃度が減少するものもあり,塩化物イオン,硫酸イオンの供試体内部への浸透挙動が溶液の種類によって異なることが明らかとなった.このことは,重金属の溶出挙動において,細孔溶液中における重金属の拡散やセメント硬化体との重金属の吸脱着の,溶液の種類による相違を考慮するのみならず,浸せきさせている溶液のイオンの挙動そのものの考慮が不可欠であることを示唆するものであり,重金属溶出挙動のモデルを構築していくなかで今後この点を検討していく必要がある. 一方,環境影響評価に対する重金属溶出量の導入方法に関する検討では,既往のモデルを活用して特性化係数を算出したところ,銅,亜鉛は鉛と比較して数値は小さいものの無視できるものではないことが示され,重金属の環境影響とCO2をはじめとする大気排出物質の環境影響との統合化を,ボックスカルバートを用いたケーススタディにより試みた.試算結果では,大気排出物質の環境影響と比較して重金属の環境影響は極めて低い結果となったが,ボックスカルバートに設定した条件によって結果が大きく変化することも示唆され,環境影響評価に対する重金属溶出量の導入では,条件の設定方法を明確にする必要があることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度ならびに今年度の実験結果を基に,重金属とセメント硬化体との吸着・脱着特性を加味した重金属溶出挙動のモデル化を構築するまでには至っていないものの骨格は形成されつつあり,また,環境影響評価における重金属の取扱いに関してもケーススタディを通じて有用な知見が得られつつあり,研究はおおむね順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度ならびに今年度の実験結果より,各溶液における重金属の溶出挙動はおおむね把握できる状況にあるため,重金属溶出挙動のモデル化の構築を急ぎ,必要に応じて,吸着・脱着特性の追加的な実験を実施していく.また,環境影響評価における重金属の取扱いに関しては,ケーススタディを重ねることで,コンクリートの環境影響評価に対する重金属溶出量の導入手法の妥当性を検討していく.最後に,研究を総括する.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に吸着・脱着特性の追加的な実験が見込まれることとなったことから,供試体の廃棄処分を平成28年度に繰り越したため,ならびに,平成28年度の環境影響評価における資料収集等に要する旅費が当初予定よりもかさむ見込みとなり,その分の予算を平成28年度に確保する必要が生じたため.
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次年度使用額の使用計画 |
追加実験等を通じて,吸着・脱着特性を加味した重金属溶出挙動のモデル化構築を確実に遂行するとともに,資料収集等の充実により,コンクリートの環境影響評価に対する重金属溶出量の適切な導入方法の提案を行っていく計画である.
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