コンクリートからの重金属溶出に関する実験的検討では,平成26年度から継続するタンクリーチング試験において,浸せき期間625日までの結果を得ている.前年の浸せき期間400日までと比較したとき,塩化物,硫酸塩のいずれの溶液を用いた場合においても,重金属溶出量に大きな相違は見られていない.これらの重金属の累積溶出量を時間の平方根との関係で示したとき,概して,浸せき開始時から浸せき期間64~100日までと,浸せき期間64~100日以降の2本の直線で近似可能と考えられる.時間の平方根に対して直線近似が可能であることから,重金属の溶出が拡散律速となっているものと考えるが,浸せき期間64~100日あたりで直線の傾きが変化する(小さくなる)ことから,拡散に対してその他の要因が影響を及ぼしているものと思われる.塩化カルシウム溶液に浸せきした供試体における重金属の累積溶出量は,供試体に含有される重金属量に対して,水セメント比0.40で約6%,水セメント比0.55で約10%に達するものの,その他の溶液に浸せきした供試体では水セメント比に関わらず1%未満のものが大半であり,溶出は供試体のごく表層部から生じていると考えられる.セメント硬化体に対する重金属の吸着特性について,pHを変化させて実験を行ったところ,pHが12.8から低下するにつれて吸着量は多くなり,その傾向はpHが12以下のときに顕著である結果が得られた.このことから,重金属の溶出過程における細孔溶液中のpHの変化が,重金属の拡散に影響を及ぼしていることが考えられる.ただし,上記の吸着特性を考慮した重金属溶出挙動のモデル化までには至らなかった. 環境影響評価に対する重金属溶出量の導入方法に関する検討では,環境影響に対して重金属溶出量を考慮する必要は明らかとなったものの,溶出量算出の設定条件を明確化させるまでには至らなかった.
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