研究課題/領域番号 |
26289145
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高橋 良和 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10283623)
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研究分担者 |
秋山 充良 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00302191)
五十嵐 晃 京都大学, 防災研究所, 教授 (80263101)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 耐震 / ポストピーク / 鉄筋コンクリート / 熊本地震 / 落橋防止構造 |
研究実績の概要 |
本年度は,2016年熊本地震により被災した橋梁において,不連続部で損傷した事例に着目し,その被害メカニズムを検討するとともに,不確定性の高い地震に関し,設計上の想定を超える地震が作用したとしても,直ちに荷重が低下しない構造対策法について検討した.本研究で得られた主な結果は以下の通りである. ・RC柱のポストピーク挙動を改善することを目的に,主鉄筋の座屈抵抗特性に着目し,従来の座屈抵抗特性である帯鉄筋,かぶりコンクリートに加えて,新たにヘッド付きフックによる座屈抵抗特性をRC柱に導入し,積極的に座屈抵抗特性を高める効果を正負交番載荷実験により検討した.座屈抵抗特性を変化させることで,耐震設計上の性能は同一であるものの,設計上の想定を超える変形領域において,ゆるやかに荷重を低下させることができることを明らかとした. ・RC柱に使用される軸方向鉄筋の節高さを変化させた結果,通常の付着が破壊された後でも,高い節による機械的な噛み合わせによって大きな支圧を発揮することで引張力を受け持ち,結果的に帯筋のせん断抵抗の減少を補完させる効果を確認した. ・熊本地震において落橋した高速道路跨道橋は,橋梁の不連続部である支承部が破壊し,さらに落橋防止構造も破壊していた.この不連続部の挙動を検討するため,横変位拘束装置の破壊メカニズムを検討し,設計法の改善点について提案した. ・熊本地震では,大切畑大橋が,設計では損傷を想定していないゴム支承が破断し,結果,下部構造に被害が発生しなかった橋脚や,ゴム支承が破断しなかったが,その下部構造が損傷した橋脚が混在した甚大な被害が発生した.被災したゴム支承を有する中空断面RC高橋脚について,その被害調査結果に基づく正負交番解析を行い,その被害メカニズムの推定を試みた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初研究計画・方法において予定していた支承部挙動に関する実験を実施することができなかったが,これは2016年熊本地震が発生し,これにより支承部を含む橋梁の不連続部における地震被害が発生し,これらの実データをもとに検討することが本研究の遂行に向けて,より適当であると判断したためである.これにより,実験では得られない実橋梁の地震時挙動を踏まえた知見を得ることができた.また,計画通り,下部構造の地震時に設計において想定した耐震性能を発揮させるための構造的方策に関する載荷実験を実施している.よって,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
熊本地震による橋梁被害において被害が発生した不連続部の情報を継続して収集し,載荷実験で得ることができない実橋梁挙動の把握に努める.また,数値解析により,構造不連続部の地震応答への影響を整理し,設計振動単位の改善提案を行う. 設計想定と異なる作用が発生しても,直ちに荷重が劣化しない構造(鈍構造)に関する載荷実験を行い,不確定性が高い地震作用への構造対策技術の開発を継続する. 以上の結果を取りまとめ,不確定性・不連続部に着目した橋梁構造の地震時応答を整理する.
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年熊本地震が発生し,当初実施予定であった振動台実験を実施するよりも,実橋梁における不連続部の地震時被害に基づく検討を行うことが有用であると判断し,振動台実験を実施しなかったため.
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次年度使用額の使用計画 |
2016年度に検討した熊本地震の被害分析に基づき,2017年度に載荷実験を行うために使用予定である.
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