研究課題/領域番号 |
26289147
|
研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
森 猛 法政大学, デザイン工学部, 教授 (10157860)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 疲労強度 / 主応力方向 / 移動荷重 / 面外ガセット |
研究実績の概要 |
主応力方向が変化する応力場での疲労き裂の発生・進展性状、そして疲労強度を明らかとする目的で、面外ガセットを有する桁試験体を対象とした定点荷重疲労試験と移動荷重疲労試験を3体ずつ行った。また、疲労き裂が生じるガセット回し溶接止端近傍で応力測定を行うとともに、それらを対象とした有限要素応力解析を行った。 2種類の桁試験体(A,B試験)を製作した.これら試験体は,H形鋼(340x250x9x14mm)にソールプレートと垂直スティフナ,そして面外ガセットを溶接したものである.試験体は、長さ4500mm、支点間距離4000mmの桁試験体である。定点荷重試験では荷重点間距離を600mmとした4点曲げ試験、移動荷重試験では輪荷重を試験体中央3000mmの範囲を繰返し移動載荷した。 定点荷重試験では、従来から知られているように、主応力直角方向に疲労き裂が進展したが、移動荷重試験では、主応力直角方向ではなく,さらに傾いた方向に進展する場合が多かった。移動荷重疲労試験で得られた疲労強度は、定点荷重疲労試験よりも30%程度低かった。 応力測定試験と有限要素解析から、移動荷重下では高い応力が生じる位置が、荷重の移動にともなって主応力の方向が変化するだけではなく、回し溶接止端を舐めるように移動することが明らかとなった。 以上のような疲労破壊の起点となる回し溶接止端での応力性状の違いが移動荷重下と定点荷重下の疲労強度の相違となって生じたものと考えている。また、このような疲労強度の違いは、応力性状の違いに起因する疲労き裂の発生・進展挙動であると予想しており、2016年度は詳細な破面観察を行う。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では面外ガセットを有する桁試験体の移動荷重疲労試験のみを行うこととしていたが、同じ試験体で定点荷重試験を行い、両者の疲労強度を比較することにより、移動荷重(主応力方向が変化する)下の疲労強度が明確になると考えた。また、桁ウェブの上部に面外ガセットが存在する場合には、当初予定していた下部に位置するよりも移動荷重による主応力の大きさと方向の変化が大きくなることが昨年度の検討で明らかになったことから、桁ウェブ上部に面外ガセットが存在する桁試験体の移動荷重疲労試験と定点荷重疲労試験も行った。そのため、実橋測定と小型試験体の疲労き裂進展試験を行わなかった。 今年度の試験で移動荷重下と定点荷重下で疲労強度が異なることが明らかとなったので、その原因究明を2016年度に行う予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度の試験で移動荷重下と定点荷重下で疲労強度が異なることが明らかとなったので、その原因究明を行う。その際の鍵は、疲労き裂の発生・進展挙動であると予想しており、2016年度は詳細な破面観察を行う。 破面観察結果や過年度に明らかとした移動荷重下での面外ガセット回し溶接部の応力性状などを加味して、最大の主応力の方向と位置が変化する応力場の疲労強度評価法の確立を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
20016年3月の謝金の処理ができなかったため。桁試験体の疲労試験を追加したため、予定していた実橋測定、2軸応力場での疲労き裂進展性状確認のための疲労試験を中止したことによる。
|
次年度使用額の使用計画 |
2016年3月分の謝金の申請を4月に行った。桁試験体の破面観察の費用に当てる。
|