本研究では、盛土や地中構造物の埋設土および自然斜面内に、雨水浸透の繰返しや地震時の地盤の液状化などにより生成する水みちや内部侵食の形成・進展メカニズムを解明する。また、内部侵食によってできた空洞やゆるみなど地盤内の局所的脆弱部が土構造物や地中構造物全体の安定性へ及ぼす影響を検討する。すなわち、斜面崩壊、道路陥没、河川堤防の浸透破壊などに対する危険度評価を試み、近年の気候変動による気象の激甚化や土地利用・社会情勢の変化に適応可能な、維持管理性や長期耐久性を考慮した土構造物・地中構造物の合理的構築・埋設・補修・維持管理方法を検討するものである。 本年度は最終年度であるため、模型実験、要素試験、数値解析、および内部侵食事例の現地調査などを通して検討を進めた結果をとりまとめ、今後の課題を抽出した。まず、細粒分の流出により土の骨格構造が脆弱になる様子や条件を要素試験やDEM解析で整理した。また、内部侵食や地価の水みちにより地中が空洞化するメカニズムを模型実験およびDEM解析で確認した。さらに、ネパール・ポカラの多発陥没や都城・宮崎県の巨大陥没、福岡県福岡市や神奈川県藤沢市をフィールドとした道路下空洞の生成傾向や拡大・進展要因について分析するなど、実際の事例にて詳細なケーススタディを行った。地下流水音調査や表面波探査等DEM、地下の水みち探索に有効と思われる調査法を比較し、空洞問題への適用範囲について考察した。
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