研究課題
土の粒子レベル、応力が集中する粒子骨格を意味する応力鎖のレベルや連続体レベルのマルチなスケールの視点で、衝撃力の伝達メカニズムを解明を試みた。大型・実物大模型実験方法や粒子ベースの数値解析方法の開発を行い、応力鎖の発生・消滅、亀裂や塑性波の伝播、密度変化を可視化を行った。主な実績は以下のようである。①緩衝層内の状態変化を計測可能な大型重錘落下実験手法の開発と衝撃応答と構造物の被災メカニズムの解明: 単一材料から成る水平緩衝層について実験した。重錘衝撃力と緩衝層内を伝達し層底面全体に作用する伝達衝撃力、底面の応力分布、貫入量や間隙圧、含水比や密度分布・締固め状態の変化の測定方法、緩衝層変状の可視化方法を提案した。②実規模RC製ロックシェッドによる緩衝層―構造系全体の衝撃応答メカニズムの解明: 実スケールのRC製ロックシェド構造を有する重錘落下模型実験を行い、弾性域と塑性域の衝撃応答を調べた。③表土における落体の跳ね返り挙動についての室内実験方法開発およびメカニズムの解明: 斜面傾斜角が可変な試験機を作成し、落体運動特性、緩衝層の粒子特性、密度、含水比、傾斜角度が、落体の跳ね返り挙動に及ぼす影響について系統的に調べた。④数値シミュレーション手法の開発と緩衝層の衝撃応答と構造物の被災メカニズムの解明: 個別要素法を用いた解析を行い、非円形要素を導入し、粒子特性や落体特性、落体下の圧縮変形や塑性変形の伝播速度、応力鎖の伝播速度や発生・消滅を追跡するのに成功した。間隙流体の効果、表面張力の効果、静止摩擦と動摩擦の両方の導入、接点に垂直方向の塑性変形の導入を引き続き行う。GPGPUシステムを利用したシステムの構築中である。⑤落石災害の事例・資料の収集・分析: 落石の被害報告資料を収集し、被害形態の詳細について調査している。事例解析を行い、現行の落石対策便覧などと比較検討を行う.
2: おおむね順調に進展している
計画通りに遂行している。緩衝層底面の応力分布については、感圧シートを用いそれを画像解析して、最大応力分布を簡単に計測するというアイディアによって数多くの系統的実験が予定よりもスムースに進めることができた。衝撃力を受けた緩衝層内の密度の増減分布が当初の予定よりも薄い層に分布しており、それを計測するという新たな課題が見つかった。個別要素法を使った計算結果を詳細に調べると同様な結果が得られ、その時間発展の様子が明らかになった。今後は、より高周波の波動や細かな水分量変化を測定することで、新たな課題解決を行うことを考えている。この課題解決の影響は当該課題だけでなく、他分野へにおいても大きい。
今後はより緩衝層内の密度変化測定の空間・時間の解像度を挙げながら、数値計算を活用した新たな可視化方法を提案を目指すとともに、以下のように研究を進める。(1)多層構造、傾斜構造、改良土を含む緩衝層の衝撃応答と構造物の被災メカニズムの解明: 大型、実物大模型実験とDEM解析などを用い、衝撃応答と構造物損傷メカニズムを調べる。緩衝層の構成土質が1種類だけでなく、砂と礫など複数種類の土の層を有する緩衝層を用い、衝撃吸収と荷重分散を効果的に制御することを検討する。また、自然崖錘堆積層も検討する。緩衝層内に初期せん段応力が発生することによる、落体の貫入痕の変化に着目し、土の衝撃応答の変化を把握する。さらに、既存の擁壁型対策工の補強例として、崖錐堆積物などの現地土を固化したソイルセメント、ジオシンセティックス、発砲スチロール板を併用した高エネルギー吸収性能を持つ三層緩衝構造を表現可能な、DEM解析モデルを工夫する。(2)表土における落体の跳ね返り挙動の実スケール実験および解析モデルの構築と検証: 室内実験の継続とその解析を踏まえ、現地斜面で実スケールの落体落下実験を行う。解析パラメータの決定方法の提案や計算モデルの修正・改良を行う。(3)落石災害の事例調査・分析による提案被災メカニズムの検証と現行設計法の改善の検討: 緩衝層の地盤力学的特性に着目し、現行設計法の見直しや改善方向を検討する。(4)落石対策と対策工の長寿命化に向けて: 土を積極的に利活用した方法とその設計法実験結果やDEM解析結果を踏まえ、緩衝層に適切な構成モデルを導出し、破壊解析、局所変形の解析が可能な方法の提案を目指す。想定された落石に対して、土層境界部への伝達衝撃力、力積波形、伝達応力分布と土との地盤力学的特徴との関連を明確にし、落石対策工の選定と設計方法を提案する。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (11件) 備考 (1件)
構造工学論文集
巻: 61A ページ: 876,886
巻: 61A ページ: 867, 875
土木学会論文集A2(応用力学)
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http://www.maeda-lab.org/