研究課題/領域番号 |
26289154
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
畠 俊郎 富山県立大学, 工学部, 准教授 (30435424)
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研究分担者 |
笠間 清伸 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10315111)
末次 大輔 佐賀大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (30423619)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 微生物 / 劣化抑制 / SEM-EDS |
研究実績の概要 |
微生物機能によるセメント改良土の劣化抑制効果を明らかにすることを目的とし,砂地盤を想定した供試体を用いた室内試験を実施した。試験条件としては,1)セメントのみ(従来技術を想定),2)セメント+尿素,3)セメント+尿素+微生物(陸域由来),4)セメント+尿素+微生物(海域由来)の4ケースを選択した。供試体作成後は密閉状態のまま20℃恒温室で気中養生を行い,28日強度を求めたのちに純水・人工海水中に浸漬させ劣化状況を確認することとした。なお,純水・人工海水は2週間に1回の頻度で交換することとし,サンプリング後に原子吸光光度計でカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンの濃度測定を行った。その後,定期的に針貫入試験による劣化深さの測定,1軸圧縮試験による強度評価を行った。試験の結果から,純水に浸漬した供試体については劣化および強度低下が認められないことが明らかとなった。一方,人工海水に浸漬した供試体については1)について顕著な劣化傾向を確認することができた。劣化深さおよび1軸圧縮強度の結果から,4)セメント+尿素+微生物(海域由来)について顕著な劣化抑制効果が認められた。この原因を明らかにすることを目的とし,カルシウム・マグネシウムの収支および劣化部分を薄片化した後にSEM-EDSによる元素マッピングを行った。その結果,尿素と微生物を併用したケースにおいてカルシウムとマグネシウムのイオン交換を抑制し,強度を維持する効果を明らかにすることができた。一方,天然海水を用いた試験では顕著な劣化が確認されないなど試験条件によって結果がばらつく傾向も認められている。そのため,温度条件などについて更なる検討を行い劣化促進条件を明らかにしたうえで再度微生物機能による抑制効果を明らかにしていきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
砂地盤について行った室内試験の結果から,本研究で着目したマグネシウムとのイオン交換により溶出するカルシウムを炭酸カルシウムとして再固定することで劣化を抑制するメカニズムの基本的有効性を明らかにすることができた。 一方,粘性土を対象とした同様の実験では針貫入試験による劣化深さの評価が困難であることや,天然海水を用いた試験では劣化量そのものが人工海水と比較して少ないなど,環境条件が試験結果に影響を与えることが明らかとなっている。 技術の普及においては再現性の高い評価技術の確立が必要不可欠であると考えられるため,この部分について更なる検討が必要と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
同じ尿素の加水分解酵素であるウレアーゼを産出する微生物であっても,種により劣化抑制効果が異なることが明らかとなった。本研究では干潮域等海水と接する場所に建設されている社会基盤施設を主な対象としていることから,海域由来の微生物が陸域由来の微生物より優れた効果を示したことは評価できる。干潮域にウレアーゼ活性を持つ微生物がどの程度存在しているかなどについては不明な点が多い。そのため,有明海干潟,富山新港内などで底泥のサンプリングを行い,目的とする微生物の有無を明らかにすることで外来微生物を持ち込むことなく目標とする効果を得る手法について研究を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に採取予定であった国内複数個所の底泥について日程的に採取できなかったため。 採取に伴い短期雇用する予定であった人件費も執行できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度に向けた評価試験は今年度中に実施する必要があるため今年度中に国内複数箇所での底泥サンプリングを実施する。
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