研究課題/領域番号 |
26289155
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
関口 秀雄 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 客員教授 (20027296)
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研究分担者 |
山崎 秀夫 近畿大学, 理工学部, 教授 (30140312)
東 良慶 京都大学, 防災研究所, 助教 (50464201)
細山田 得三 長岡技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70262475)
原口 強 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (70372852)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 国土保全 / 自然災害 / 海岸侵食 / 漂砂環境 / 洪水堆積物 |
研究実績の概要 |
寺泊野積海岸における物質収支の鍵を握るのは、大河津分水建設に先立つ旧海底面の同定と、洪水由来堆積物の海域における配分過程の把握である。そこで、以下のような調査研究を実施した。 1 外浜における泥質洪水堆積層の保存ポテンシャルおよび砕波帯以深における浮遊砂流出の実相を調べるために、4箇所でバイブロコアリングを行った。特筆されるのは、「波による地形変化限界水深(概ね 8 m」より沖合の2地点(VC-15, VC-15S)において、砂底下約1 m以深に複数枚の泥質洪水堆積層が分布していることである。 2 冬季暴波浪により海底面に作用する流体力学的外力を推定するために、NOWPHASの高波記録を収集分析するとともに、底面軌道流速の規模を推定した。その結果、水深15 m地点では波高4 mを超えるとシートフロー状態となり、海床形態は平滑床になることが推定された。そのような波浪堆積構造の検証には、バイブロコアのX線CT画像が極めて有力な情報をもたらすことが分かった。研究協力者: 電力中央研究所 上田圭一博士)。 3 外浜と陸棚を結ぶ泥質堆積物の運搬性と堆積層形成の繋がりを明らかにするために、水深20 mから水深200 mまでの海域、計10地点において、グラブ採泥を行った。特筆されるのは、水深60 m地点の海底堆積物のコンシステンシーが最も高く、ほぼ定常的に泥の堆積が起こっていることである。放射性セシウム濃度の深度分布測定結果によると、同地点の堆積速度は概ね 3 cm/yrである。グラブ採泥試料に含まれる貝化石の産状分析によると(研究協力者: 下山正一博士)、水深30 m地点において産出二枚貝の種が最も多様かつ豊富である。水深30 m地点では砂泥成層が形成されており、二枚貝食性と繋がりのあることが推定される。珪藻分析についてはバイブロコア中の泥質洪水堆積層の珪藻分析に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
外浜の一般海岸部と河口沖の2測線において予定どおりバイブロコア試料を採取し、泥質洪水堆積層の分布状況を把握するとともに、X線CT撮影により堆積物に記録されていた波浪堆積構造を読み解き、新潟沿岸域の波候と結びつける目処がついたため。 ボタン型水温計については試作を行ったが、冬季をまたぐ設置・回収費用が予想以上に高価なため、実海域設置を見送ることにした。しかし、ねらいとする冬期暴波浪による底面軌道流速については、上述のとおり、堆積物に記録された波浪堆積構造から推定する方法が有力であることが分かったので、その方向の研究を推進していくことで目的達成には支障をきたさない。
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今後の研究の推進方策 |
放射性セシウム濃度測定は堆積物の年代を決めるために有力な手ががりを与えるが、福島原発由来のCs-134濃度は低レベルになってきているので、その同定には多面的な検討を加える予定である。 冬期暴波浪や融雪出水等の季節変動を把握し、堆積リズムと結びつけるには堆積物中の珪藻分析が有力になることから、珪藻分析専門家の助言を得ながら、堆積物コア中の珪藻分析を進めて行く予定である。 泥質洪水堆積層の保存ポテンシャルについて貴重な成果が集積しつつあるが、個別海岸(寺泊野積海岸)での知見にとどまることがないように、北海道日高海岸やアメリカ北西海岸(Eel川河口沖)の波候を検討し、比較流域学的知見に立って広く情報発信したい。
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