研究課題/領域番号 |
26289156
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
伊藤 譲 摂南大学, 理工学部, 教授 (30281752)
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研究分担者 |
石川 達也 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60359479)
所 哲也 苫小牧工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (40610457)
大西 有三 関西大学, 工学部, 教授 (30026348)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 凍結融解土 / 凍土 / 凍上 / 透水係数 / 遮水壁 / 数値解析 |
研究実績の概要 |
本研究は,凍土方式遮水壁に関する諸問題に対応できる長期間の安定管理技術の構築を目指し,具体的には以下の3点を目的とする.(1)泥岩の凍上・凍結融解特使の把握:①凍結融解土の透水性,②凍土の透水性,(2)凍結融解を利用した砂質土の目詰まり対策,(3)凍土壁の成長時と定常状態における地下水流入の数値計算モデルの確立.目的別の実績は次のとおりである. (1)-①:正規圧密土では,従来,透水係数に及ぼす影響については,冷却温度と上載荷重のみであり,冷却速度や冷却温度などの凍結方法,給水条件等とは関係がないことが分かっていた.本研究では,泥岩層において凍土壁を長期間維持する状況を想定して,過圧密粘性土を用いて凍結融解後の透水係数変化の要因について実験的に検討を行った.透水係数評価では,熱流方向(IL面に対して直角),熱流直交方向(IL面方向),さらに凍上変位が抑制された条件の3種類を想定した実験装置を用いて検討を行っている. (1)-②:凍土は遮水能力を有するが,厳密な意味では完全な遮水体ではない.現在計画中の凍土遮水壁は総延長が約1500mと長大なため,凍土の透水係数の僅かな変化が漏水量に大きな影響を与える.そこで,アイスレンズの発生を抑止した条件下で凍土の透水係数を求める試験法を提案している.本研究では,凍土の透水特性の評価精度を向上することを目的とし,改良を加えた試験装置での実験を行っている. (2):未着手 (3):凍土遮水壁は,その施工途中で一定以上の地水流が存在すると閉合することができない.凍土閉合の限界流速を求める理論式はすでに提案されているが,施工環境によっては,既存の理論式では扱えないケースも発生している.そこで,流速の異なる地下水流が存在する砂質土模型地盤内に凍土壁を造成する模型実験を実施し,浸透流・熱伝導連成解析により実験結果との比較を行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,「研究実績の概要」で示した3つの目的に対して,総合的に30~40 %程度を達成している.個々の目的別の達成状況を以下に示す. (1)-①:熱流方向の透水係数について,(1)一次元凍結融解実験,三軸凍結融解実験から透水係数の増加に冷却速度,温度勾配等の条件,つまりILの量は影響を与えていない.(2)荷重の影響を受けているが,凍土遮水壁が施工される深度程度の荷重条件では顕著でない.(3)凍上率(ILの量)に関係する条件と透水係数に関係性は見られない.(4)間隙比が同じでも凍結融解土は未凍結土よりも間隙比が大きい.また,熱流直交方向の透水係数については,(1)熱流方向の変位を拘束した場合には,ILの融解痕の影響が見られる.(2)熱流方向の変位を許した凍結融解では,熱流方向と同様の傾向が得られた. (1)-②:実験結果から,次のことが明らかとなった.(1)温度分布の計測結果より,改良された装置において凍土の透水係数を確実に測定できていることが分かった.(2)凍土の透水係数は,不凍水量と相関があり,温度依存性を有する. 以上,目的(1)-①と②では全体の40~50 %程度を達成した. (2):未着手であり,達成度は0 %である. (3):凍土壁の成長時と定常状態における地下水流入の数値計算モデルの確立について,次のような進捗状態である.(1)室内実験のような比較的単純な凍結管配置における試験においては,凍土壁の造成に及ぼす地下水の限界流速は,既存の理論式に基づく結果や浸透流・熱伝導解析による結果とほぼ一致する. 以上,目的(3)は全体の40 %程度を達成した.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の課題と推進方策を研究目的別に示す. (1)-①:熱流直角方向(IL方向)の透水係数に関して,(1)実験方法と装置の改良を行い,再試験を実施する.(2)高い凍上性を有する土質に関して実験を行い,既往の実験結果と合わせて,凍結融解土の透水係数に関する知見を統合する.(1)-②:凍土の透水係数に関して,供試体内部の温度分布の検討を進め,凍土の透水特性を明らかにする. (2):凍結融解による砂質層の目詰まり解消に関しては,揚水・注水井のフィルター材の目詰まりと一部の凍上性材料の類似性に注目した検討を行う. (3):既存の理論式と数値解析により,簡単な凍土遮水壁の実験を再現できることが明らかになっている.今後は,実地盤に近い複雑な状況に対応させるべく検討を進める.
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