研究課題/領域番号 |
26289158
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
真野 明 東北大学, 災害科学国際研究所, 名誉教授 (50111258)
|
研究分担者 |
呉 修一 東北大学, 災害科学国際研究所, 助教 (00646995)
有働 恵子 東北大学, 災害科学国際研究所, 准教授 (80371780)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 津波 / 侵食 / 構造物 / 液状化 |
研究実績の概要 |
2011年の東日本大震災では、構造物の周辺で大規模な侵食が各所で発生し、構造物の被災の原因にもなっている。これらを復興するにあたって、同様の外力が作用したときに壊れにくい構造(粘り強い構想)にすることが求められている。このため、本研究では、大規模侵食の機構を定量的に明らかにし、2011年大津波で被災した現象を再現できるモデルの開発を目的とした。 構造物周辺の津波による侵食機構として、底面せん断力による底質の巻き上げと、地中に浸透した過剰間隙水圧による液状化の2つがあるが、両方の機構を定量的に評価して比較したものはこれまでなく本研究ではこれを明らかにする。 最初に、過剰感激水圧による液状化発生の理論解析を行い、地盤条件(透水係数、嵩密度、空隙率、空気混入率など)と外力条件(波高、周期)を含んだ幅広い条件で液状化が発生する条件を無次元汎用表示して定量化した。これは、複雑なパラメータの組み合わせで決まる液状化の全体像を簡潔に定量化したもので現象解明に大きく寄与している。 次に、様々な地形に適用できる準三次元有限体積法の予測モデル開発した。浅水流方程式、浮遊砂の輸送方程式、地盤中の鉛直一次元過剰感激水圧変動方程式を連立して解くモデルである。最初にこれをTonkinらの大型水理模型実験結果と比較して、現象を再現できることを示し精度を検証した。次にこれを、東日本大震災で大きく侵食した仙台市藤塚地区に適用し、破堤した防潮堤周辺の侵食現象を再現した。この中で、侵食に主要な影響を与えたのは底面せん断力であること、液状化の影響はこれに比べて30%程度と小さいが無視できないこと明らかにした。 この研究結果は、2016年3月にシドニーで開催された国際学会ICSで発表し、活発な議論を通じ高い関心を呼んだ。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べたように、当初の目的の主要部分である、侵食メカニズムの定量化を実現することができたので、研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、本研究の研究期間の最終年度である。防潮堤の背後に広がる海岸林が侵食に及ぼす影響を定量化し、また防潮堤の前面に広がる砂浜が侵食や堤防被災に及ぼす影響を定量化する。これらを総合して、侵食や防潮堤被災のメカニズムと要因を明らかにする。 また、この解析をうけて、粘り強い構造を実現するための、設計指針を作成する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
事務担当者の手続きの遅れにより、3月分の支払い(物品費と人件費)が年度内に完了しなかった。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度4月分の支払いとして手続きが進められる。
|