研究課題
1.観測システムの更新モンゴル草原のKBUサイトの観測システムを更新し,安定した自動観測によるデータ取得が可能になった.また,アルゴス衛星システムを用いたデータ転送の機能を付加し,観測データを観測から1週間以内に日本へ転送することが可能になった.これによって,観測システムの状態が常に監視できる他,将来の遠隔地の観測データを用いたリアルタイムの同化実験への可能性が開かれることとなった.2.データ同化に必要なデータのアーカイブモンゴルの半乾燥草原で実施されている水文気象観測値のうち,マンダルゴビ地点での観測値を整理し,陸面過程モデルへの入力や,データ同化の観測値,あるいはデータ同化実験の検証値として使用できるアーカイブを作成した.3.データ同化用の陸面モデルの準備陸面過程モデルSiBUCにデータ同化手法のひとつである粒子フィルターを組み込み,データ同化実験の準備を整えた.構築したデータ同化システムを用いて,飽和度とマトリックポテンシャルを関係づけるパラメータについて異なる値を持つ多数の実現値で表現し,土壌水分量の確率分布を推定・更新するデータ同化実験を行った.土壌水分量を観測情報として使用した実験の結果,土壌水分量の推定精度が向上することが確認できた.また,衛星による広域土壌水分データの代用とする表層土壌の熱慣性分布を求めるため に、これに用いる地表面熱収支モデルを改良した。改良点は夜間における大気安定度による影響を考慮した陸面交換係数の設定である。これによって、熱慣性値と表層土壌水分実測値の相関を改善できた。改良したモデルによって2012年夏季の熱慣性分布を算出し、MAVEXによる土壌水 分実測値と比較したところ、概ね良好な相関を得られた。
2: おおむね順調に進展している
観測システムの更新をH26および27年度に行い,これによって遠隔地からの準リアルタイムのデータ転送を可能にする予定であったが,1年目のH26年度に,予定よりも前倒しでアルゴスデータを用いたデータ転送が可能になった.H26年度に予定していたデータ同化実験に使用するデータのアーカイブは,予定通りH26年度に終了した.データ同化用の陸面モデルの準備については,粒子フィルターを用いたデータ同化モデルと,熱慣性を用いた熱収支モデルが構築された.以上により,達成度は約90%程度であり,概ね順調に進呈していると考えている.
アンサンブルカルマンフィルターの開発が遅れており,重点的に推進する.それ以外は計画通り,同化実験を行い,データ同化の効果の検証を行う.
モンゴルの半乾燥草原における広域観測プロットでのデータを用いて,オフラインの陸面モデルの土壌水分同化実験を行うために,平成26年度では陸面過程モデルをデータ同化用に書き換え,同化実験の準備をする計画であった.データ同化手法を利用するためには,並列計算機が必要不可欠であるため,その購入を見込んでいた.データ同化用の陸面過程モデルのひとつとして,データ同化手法のひとつである粒子フィルターを陸面過程モデルSiBUCに適用した.この際,対象領域の拡張は技術的に容易であることが判明したことから,広域を対象とするのではなく,単一地点を対象とした陸面データ同化手法の構築を行った.そのため,当初の想定よりも今年度に限り計算機負荷が小さくなったことから,既存の計算機設備を用いることにした.
平成26年度では,粒子フィルターと陸面過程モデルSiBUCによる陸面データ同化手法を構築した.平成27年度には,構築した手法を広域および複数の事例に適用する.具体的には,モンゴルの半乾燥草原で広域に実施されている水文気象観測値を用いて,フォーシングとデータ同化の観測値に様々な組み合わせを検討し,土壌水分や蒸発散の最適推定値を得るためのデータ同化手法について考察する.広域に適用するため,陸面データ同化手法の計算負荷が増大すること,また,多数の数値実験を行うために数値計算の絶対量が増加することがが明白である.そこで,平成26年度に購入予定であった並列計算機を平成27年度に購入し,陸面データ同化手法の多数に及ぶ数値実験を実施する.
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件)
Soil science and plant nutrition
巻: 61 ページ: 61-75
10.1080/00380768.2014.990349
PloS one
巻: 9 ページ: 1-11
DOI: 10.1371/journal.pone.0097295