研究課題/領域番号 |
26289164
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
道奥 康治 法政大学, デザイン工学部, 教授 (40127303)
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研究分担者 |
前野 詩朗 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (20157150)
神田 佳一 明石工業高等専門学校, 都市システム工学科, 教授 (60214722)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 河川地形解析 / 合流点処理 / 樹林化 / 河川環境 / 自然再生 / 維持管理 / 地形の二極化 |
研究実績の概要 |
加古川三川合流部を対象にした現地調査と合流点処理に関する洪水流・河川地形解析を実施した.合流点近傍の砂州の固定化・みお筋深掘れなど,河川環境劣化を最小化し,河口堰背水の影響を受ける以前の時代における河川環境を目標値としてこれを再生するために,平成25年度には石積直角水制が合流点直上流の左岸側に設置された.水制工設置後3年しか経過していないものの幸いにして所定規模の出水数回により地形変化が観測されたため,その再現解析により流砂解析モデルのパラメータ調整を実施した.一方,移動床水理模型実験によって支川流量比が河川地形に及ぼす影響を検討し,流砂過程と地形変化の再現解析を試みた.現時点では検討ケースが二種類に限定されており,水制工が合流点近傍の土砂収支に及ぼす影響については次年度以降の課題に位置づけている.近年の複数の出水を対象に短期解析を実施して,解析諸条件を決定した後,河川地形と流況の長期変化を予測するための長期解析モデルを構築した.水制工を含む合流点処理,樹林管理,土砂掘削など,河川の維持管理の枠組みによって河川環境の自律的再生を果たすために,20年程度の河川地形長期解析を試みた.出水イベントとしては地形変動をもたらす流量規模以上の出水実績を対象とし,流砂解析の上下流端境界条件を与えた.旭川では河道内植生の持続可能管理を目指して,これに要する河川工学的支援ツールを構築した.樹林化した河道を管理する上での最大の課題は樹木抗力の壁面粗度への等価換算であり,出水実績と二次元水理解析に基づいて粗度係数を同定する解析手法を提案した.また,富士川水系笛吹川の万力林を対象とする水害防備林の樹木特性調査と洪水流解析を開始した.固定床条件の下で水防林内外の洪水流解析を実施し概ね妥当な結果を得たので,移動床解析に基づく水害防備林の適正管理を目指す見通しが立った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大堰湛水と合流の影響を受ける区間の河川地形解析を実施するために平面二次元河川流モデルを用いて過年度の出水流況と河川地形変化の短期解析を実施した.数値解析の諸条件や移動床水理モデルに含まれるモデルパラメータの最適値を同定し,現象を適切に再現できることを確認した.実現象では洪水流況の詳細構造や河床地形分布の再現性を全て点検することができないために,流況が制御された室内水理模型実験を実施して,平面二次元モデルによる流れの構造と合流点近傍の局所地形の再現を試み,実験結果との比較からその妥当性を検証している.ただし,実験ケースが限定されているため,さらに広範な水理条件に対するモデルの再現性を確認することが必要である.短期解析で平面二次元モデルの再現性能が概ね満足いくものであったので,河川の維持管理ツールとして20年期間の長期地形変化を予測するための長期解析を実施した.基本的に短期解析で用いたモデルパラメータを踏襲したが,様々な維持管理シナリオが河川地形へ及ぼす影響を検討するためには,長期解析で発生する計算負荷を軽減することが何よりも必要であるため,差分間隔などの数値解析諸条件を工夫して短期解析との整合性を有した長期解析モデルとなるように創意工夫を図った.様々な維持管理プログラムの中で本年度は水制工に限定して20年程度の河川地形解析を実施した.特に,水制工の設置位置,角度,高さ・幅・長さなどの諸元が河川地形に及ぼす影響を明らかにし,横断地形の尖り度・歪み度パラメータによって地形二極化の定量評価パラメータを提案した.旭川で実施した樹木抗力の壁面粗度への等価換算とそれを用いた洪水流況解析については再現精度が良好であり,樹木管理による河川環境整備の適正化を検討する上での技術ツールをおおよそ構築したと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
水制工による合流点処理がみお筋の偏りや交互砂州の固定化の緩和・是正など,河川環境の自律的再生効果を推定する.水理模型実験によって,支川流量比や水制工諸元が河川地形に及ぼす影響を実験的にも再現し,現地観測値と合わせて流砂解析モデルの再現性能を重層的に確認する.水制工,合流点処理,樹林管理,土砂掘削など,河川の維持管理の枠組みによって河川環境の自律的再生を果たすために,これら維持管理業務を様々に組み合わせたシナリオを組んで河川地形の長期解析を実施し,本研究の目的を果たしうる河川管理技術の体系化を図る.旭川に関しては,加古川よりも河道内植生の管理に特化して,河川環境の自律的再生戦略を検討する.樹林化河道の粗度係数推定法の精度向上を図るとともに検証ケース数を増やして本手法の実用化を果たす.また,河川植生が河川地形・河床材料や洪水時・平水時における流れの構造など,河川生態系の支配諸因子に及ぼす影響を系統的に明らかにする.水害防備林を対象とする流砂解析では,水害防備林が洪水制御・護岸防止機能とともに流水阻害効果という相反機能を備えていることを考慮し,今後の安全・安心な河川管理に資する河道内植生の管理方策の指針を提案することを意図している.また,樹林の流砂制御機能にも着目し,水防林や河畔林による河川環境の能動的制御に関する知見を得ることを目指す.各フィールドにおける堆積土砂,樹木,石礫水制などの維持管理シナリオが河川環境の自律的再生機能に及ぼす「インパクト-レスポンス」を体系化し「維持・修復→点検→方策修正」の総合的知見を発出する.
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度末にワークステーションの購入計画を提出したが,本学経理事務の締め切りに間に合わなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度内に納品が完了し,本年度開始とともに支払い処理をしているので,実質的には次年度使用額の大部分は経理処理済みである.
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