研究課題/領域番号 |
26289165
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
川西 澄 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40144878)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 水工学 / 洪水 / 減災 / 水資源 / 水循環 / モニタリング |
研究実績の概要 |
本研究では,申請者が世界に先駆けて開発に成功した河川音響トモグラフィーシステム(FATS)を発展させ、低水から洪水までの流量を自動連続計測できる技術の確立を目指して行ったもので、具体的な研究実績は以下の通りである。 1.断面平均流速・流量の計測精度を高めるため、u-blox社の高精度タイミングGPSモジュール(LEA-6T)が出力する非常に正確な1Hzと10MHzのパルスを河川トモグラフィーシステム(FATS)の音波発信とCPUクロックとして利用するように改良した。さらに、発信音波の波形と受信プリアンプの調整を行って現地実験を実施した結果、従来のシステムと比較して信号対雑音比が増加し、有効なデータの取得率が98%以上に向上したが、FATSの動作中に回路の一部が損傷することが頻発した。この原因が、音波の発信時に昇圧トランスから発生するスパイクであることが判明したので、このスパイクを遮断する対策を講じた結果、長期にわたって安定した計測が可能になった。さらに、流速分解能を高めるため、53 kHzの高周波数トランスデューサーを使った実験を300 mの音線長で行い、良好な結果を得た。 2.改良に成功したFATSを用いて、江の川において30秒間隔で数ヶ月にわたる流量観測を行った。得られた流量データは、ADCPによる横断観測データと比較した結果、相対誤差10%以内でよく一致していた。さらに、FATSにより得られた連続した流量時系列には、従来の方法では観測できなかった流量の短時間変動がとらえられていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
河川音響トモグラフィーシステム(FATS)の動作中に回路の一部が損傷することが頻発した。この原因が、音波の発信時に昇圧トランスから発生するスパイクであることが判明したので、このスパイクを遮断する対策を講じた結果、長期にわたって安定した計測が可能になった。回路損傷の原因解明に時間を要したが、改良型FATSのプロトタイプは完成し、高精度な流量データを連続して計測できている。平均水深が1 mに満たない浅い低水でも改良前のFATSのように欠測することはなくなった。ただし、大きな出水は観測できていないので、今年度は1年を通して連続した流量データを収集する予定で準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
計測システムのトラブルによる欠測はほぼ無くなったので、改良版河川音響トモグラフィーシステム(FATS)のプリント基盤を作成して信頼性を高め、システムの最終版を完成する。また、17 kHzと53 kHzの音波を用いた実験を追加し、河川の物理環境(スケール、流速、土砂濃度、河床材料)に応じた適用性を確認する。さらに、トランスデューサーや水位計が流失することがないように設置に万全を期して低水から洪水までの流量を連続観測することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
FATSの性能向上を目指した改良にともなって発生した問題解決に時間を費やし、現地実験の期間が短くなったため、現地実験のために計上していた経費の一部が未使用となった。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品(4,030,000円):広帯域トランスデューサー(17 kHzと53 kHz)、水中ケーブル、改良版マザーボード、電子パーツ、金属・プラスチック材料、バッテリーの購入費。旅費(600,000円):調査・資料収集や国内外における研究成果発表のため。人件費・謝金(400,000円):設置システムのチェック、観測補助や採水資料の分析を行う研究協力者への支払い。その他(800,000円):河床形状の測量委託費、現場設置工事費、学会投稿料の支払い。
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