研究実績の概要 |
本研究は、低炭素社会に対応した革新的下水処理システムを開発することを目的として、嫌気性処理、機能性分離膜、凝集剤を融合させることで、水質確保とエネルギー回収の両立を実現できる創エネルギー型下水処理システムの研究を行う。 H26年度はAnMBRを用いた下水処理における温度と滞留時間の影響を検討することを目的として,溶解性人工下水の連続処理実験を行い, 温度が処理性能, 物質収支, 膜性能に及ぼす影響を評価した。その結果, 以下のような知見が得られた。15℃の温度条件においてHRT 12 hで良好な処理水質, 高いメタンガス回収率が得られたのに対し, 10℃では低負荷においても処理性能やメタン回収率が著しく低下した。膜性能の評価及び回分ろ過実験の結果より, 室温域と低温域における膜ファウリングの変化は微生物代謝産物が大きく関与していると考えられる。 室温域ではケーキ層による可逆的ファウリングが膜性能低下の主な原因であるため, ケーキ層を除去できるシステムを構築することで膜を交換することなく長期間の連続処理が可能になる。温度が低下するに従い, SMPやEPSといった微生物代謝産物の生成量が増加し, 膜ファウリングが起きやすいことが示された。メタン生成活性試験より10℃の温度条件で酢酸資化性と水素資化性のメタン生成活性はそれぞれ0-0.03, 0.01-0.02 g-COD/g-VSS/dayと25℃の温度条件の活性値と比較して (酢酸, 水素 : 0.17-0.54, 0.25-0.32 g-COD/g-VSS/day), ワンオーダー以上活性が低下したことから, 10℃での生物学的処理は非常に困難であることが示された。
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