研究課題/領域番号 |
26289182
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
原本 英司 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (00401141)
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研究分担者 |
岸田 直裕 国立保健医療科学院, 生活環境研究部, 主任研究官 (10533359)
端 昭彦 京都大学, 工学研究科, 日本学術振興会特別研究員 (70726306)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 土木環境システム / ウイルス / 水循環 |
研究実績の概要 |
水道水源中の糞便汚染源の解析は,影響の大きな汚染源を特定して適切な負荷低減対策を講じ,水道水の微生物学的安全性を保障する上で重要となる。本研究では,ウイルスが高い宿主特異性を有することに着目し,糞便汚染源となり得る試料中に優占的かつ特異的に存在するウイルス遺伝子マーカーを測定することにより,水道水源中の糞便汚染源をより正確に同定可能な手法を開発する。 平成27年度は,前年度に引き続いて,宿主特異的ウイルス遺伝子マーカーの候補一つであるトウガラシ微斑ウイルスに対する水中ウイルス濃縮法の有効性を評価した。既存のウイルス濃縮法の開発時のモデルウイルスとして広く用いられているF特異RNA大腸菌ファージMS2とQβも使用し,これらのモデルウイルスを添加した水試料(水道水,河川水)を複数のウイルス濃縮法(ナノセラム陽電荷膜法,陰電荷膜破砕型濃縮法,酸洗浄型陰電荷膜法)に供した。その結果,トウガラシ微斑ウイルスは,MS2およびQβと同程度の回収率を示し,既存のウイルス濃縮法のトウガラシ微斑ウイルスに対する有効性が確認された。しかしながら,特に河川水からの回収率は低くなる傾向にあり,ウイルス実態調査を行う際には回収率試験も並行して実施し,水試料ごとの回収率を適切に把握しておくことの重要性が示唆された。 水道水源および浄水処理工程におけるウイルスの挙動を明らかにするため,国内5ヶ所の浄水場において原水と工程水(計22試料)を採取し,陰電荷膜破砕型濃縮法による濃縮操作に供した後,定量PCRによって複数のウイルスを測定した。トウガラシ微斑ウイルスの陽性率は86%と非常に高かったが,ノロウイルス等の病原ウイルスの陽性率は低い値(0~23%)であった。浄水場の全処理工程においてウイルス除去率は2~4 log程度であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
様々な水中ウイルス濃縮法によるトウガラシ微斑ウイルスの濃縮回収率に関する多くの実験データを得ることができたこと,さらに,実浄水場におけるウイルス実態調査を実施できたことより,研究は概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
実浄水場におけるウイルス実態調査を継続し,病原ウイルス(ノロウイルス,アデノウイルス等)とトウガラシ微斑ウイルス,指標微生物(大腸菌等)との挙動の相関を詳細に解析する。また,糞便汚染レベルの異なる河川水等を対象としたウイルス実態調査も実施し,研究期間全体で得られた成果を整理する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ウイルス濃縮や遺伝子定量作業の際に,十分に計画を立てて可能な限り一度に多くの試料を測定するようにすることにより,作業量の軽減を図るとともに,検量線作成用の標準試料等の使用量をの削減をはじめ,試薬代や消耗品代を節約することができた。また,試薬や消耗品類は極力メーカーキャンペーン時に購入するようにした。これらの理由により,次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
ウイルス遺伝子の定量の際に使用するPCR酵素等の高額試薬類の購入に使用する予定である。
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