平成28年度も、前年度に引き続いて、水中ウイルス濃縮法によるトウガラシ微斑ウイルス(PMMoV)の濃縮回収率の測定と、浄水処理工程におけるウイルスの除去率の測定を行った。 水中ウイルス濃縮法による濃縮回収率の測定実験では、河川水を用いた場合の回収率データの蓄積に努め、3種類の濃縮法(4濃縮条件)において、PMMoVとF特異RNA大腸菌ファージMS2の回収率を測定した。PMMoVの平均回収率(各n = 18)は、陰電荷膜破砕型濃縮法を用いた場合に11.9%となり、酸洗浄型陰電荷膜法(5.3%)およびナノセラム陽電荷膜法(誘出液にビーフエキスを使用:2.8%、誘出液にポリリン酸ナトリウムを使用:1.6%)による回収率よりも高い値が得られた。MS2ファージの回収率も同様の傾向を示していたことから、腸管系ウイルスに対して有効な濃縮法はPMMoVに対しても有効となることが示唆された。 国内6ヶ所(7処理工程)の浄水場で1~3回ずつ採取した水試料56試料のうち、PMMoVは89%の試料から検出され、他の腸管系ウイルス(ノロウイルスGI・GII、ヒトアデノウイルス、エンテロウイルス、アイチウイルスおよびサリウイルス)の陽性率(2~25%)よりも大幅に高い値となった。各処理工程の前後両方でウイルスが検出された際のデータを用い、PMMoVの除去率を算出した結果、沈殿処理では0.21~2.21 log、オゾン処理では1.15~2.18 log、生物活性炭処理では0.14~1.29 log、膜ろ過処理では0.46~2.00 logとなり、各浄水場の処理工程全体では1.80~4.06 logとなった。実浄水場において腸管系ウイルスの除去率を求めることはこれまで困難であったが、PMMoVを用いることでその代替となる除去率を得ることに成功した。
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