研究課題/領域番号 |
26289183
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
川越 保徳 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (00291211)
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研究分担者 |
森村 茂 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (20230146)
惣田 訓 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30322176)
濱 武英 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (30512008)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 環境保全 / Anammox / 部分亜硝酸化 / 一槽型窒素除去 / 微生物学的水処理技術 |
研究実績の概要 |
本年度は,研究開始二年目にあたり,初年度のH26年度中に基礎を確立した部分亜硝酸化プロセスを踏まえての,一槽型部分亜硝酸化-Anammox反応プロセスの確立とその維持に関し,反応槽の運転条件の影響を詳細に検討した。運転条件(影響因子)については,先行研究事例と昨年度の結果を検証しつつ,pH,温度,ばっ気量(酸素供給),を主たる運条件・因子とし,それらの及ぼす影響を明らかにした。 また,昨年度の報告でも述べたように,本研究の実施にあたっては,二つの方法を検討してきた。一つは,前段反応である部分亜硝酸化プロセスを確立し,諸運転条件と部分亜硝酸化との関係を明らかにした後に, Anammox細菌群(バイオマス)を植種して一槽型プロセスを構築するものであり,もう一方は,部分亜硝酸化プロセスの確立後にばっ気量(酸素供給量)を減らし,可能な限り低い溶存酸素条件下を維持することでAnammox反応の自発的発生を促すことで一槽式プロセスを確立しようとするものである。 本年度の成果としては,部分亜硝酸化プロセスの確立と関連学術知見をまとめ,国際学会誌にて発表したこと,並びに部分亜硝酸化の後にAnammoxバイオマスを投入する方法で一槽型プロセスの確立に成功し,関連論文が国際学会誌にアクセプトされたことである。また,部分亜硝酸化からの自発的Anammox反応の発現による一槽型プロセスについても,すでにスタートアップしており,現在,長期間での運転と負荷の向上,細菌叢などに関する学術的知見の収集を行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H27年度の研究実施計画は, MBRによる部分亜硝酸化プロセスの確立,一槽型部分亜硝酸化-Anammoxプロセスの立ち上げと長期間に亘る連続運転の実施,窒素除去能と運転条件との関係解明,細菌群集構造の解明などの学術的知見の収集を実施することであり,今年度中に,上記知見をまとめて国際学会などで発表するともに,国際学術誌での論文発表(1件はアクセプト)にこぎ着けたことなどから,上記の達成度と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度(平成27年度)の引き続き,部分亜硝酸化-Anammox法の安定維持と窒素除去能の向上および安定な長期運転を目指して知見を収集するとともに,以下の研究を重点的に実施する。 ・部分亜硝酸化と部分亜硝酸化-Anammox法における共生培養系の詳細な細菌叢解析と動力学モデルの基礎の構築 Anammox細菌(AnaMmox Bacteria:AMB)の単離および純粋培養は,世界的にも成功例が無く,これまでに報告されているAMBの培養系はすべて混合培養系である。また,部分亜硝酸化-Anammox法では,部分亜硝酸化を担うアンモニア酸化細菌(Ammonium Oxidizing Bacteria:AOB)やAMBをはじめ,共生・共存細菌の確立が前提となる。したがって本研究では,AOBやAMBを含め,共生・共存細菌間の関係に関する理解がきわめて重要である。一方,培養が困難な細菌や複雑な共生培養系を構成する細菌群の同定や量的・空間的情報の解析には遺伝子解析手法が有効なツールとなる。H26年度には,ランダムクローニング法により,部分亜硝酸化過程と一槽式反応プロセス過程における細菌叢の大まかな把握を行った。さらに本年度は,定量的PCRによる細菌群の数量的情報の把握,FISH法による空間的情報を解明する。また,部分亜硝酸化とAnammox反応の二種の反応を一つの反応槽でバランスさせる本法において窒素除去特性に関する動力学モデルの基礎の構築したい また,本研究は,一槽式反応プロセスの基礎を確立すべく実施してきたが,今後は実用化の可能性を検討するため,槽内循環ばっ気法による反応プロセスの構築や実廃水への適用についても検討していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究実績の概要および現在までの達成度の欄に記したように,今年度は2つ方法にてメンブレンバイオリアクタ(MBR)での一槽型部分亜硝酸化-Anammox法の基礎を確立し,長期運転可能性を検討した。反応槽の作成や実験のスタートアップに費用がかかったものの,その後は,試薬代や一般的な実験器具など消耗品の購入などで支出が抑えられ,最もランニングコストの高い細菌叢関連の試薬などについては来年度に消費が見込まれるために,予算を繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
H28年度の研究計画では,細菌叢解析を主軸におくこと,および反応槽循環ばっ気方式への切り替えや,その事前実験・検討として窒素発生装置などの購入,および分析の効率化と迅速化を鑑み,マイクロプレートリーダなどの分析機器購入にかかる費用として執行したいと考えている。
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