研究課題/領域番号 |
26289183
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
川越 保徳 熊本大学, その他の研究科, 教授 (00291211)
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研究分担者 |
森村 茂 熊本大学, その他の研究科, 准教授 (20230146)
惣田 訓 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30322176)
濱 武英 熊本大学, その他の研究科, 准教授 (30512008)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 一槽型部分亜硝酸化-Anammoxプロセス / メンブレンバイオリアクタ(MBR) / 窒素除去 |
研究実績の概要 |
本年度は当該研究課題の最終年度であった。しかし,4月14日と16日に発生した2016年熊本地震により,当研究を行っていた実験室が一部損壊し, 1週間以上の浸水と停電の被害を受けた。また,研究に協力・携わっていた大学院生などが1ヶ月以上,一時帰国,帰省するなどの状態となった。さらに,リアクタ条件などの検討に使用していたファーメンターも破損し,6ヶ月以上の研究の遅れが生じた。この間はバイオマスを維持することのみに専念し,分析機器や器具・試薬の準備が整い次第,遺伝子解析などを実施し,リアクタの再立ち上げ後から本格的に研究を再開した。 昨年度は,部分亜硝酸化とAnammoxのバイオマスを別々に用意しておき,はじめに部分亜硝酸化を立ち上げ,次にAnammoxバイオマスを投入するといった方法で,一槽型プロセスの構築に成功した。そこで本年度は,次の課題・挑戦として,部分亜硝酸化からの自発的Anammox反応の発現,すなわち,Anammoxバイオマスを添加することなく,部分亜硝酸化-Anammox反応の一槽型プロセスの立ち上げを試みた。 研究室で維持している活性汚泥をリアクタに植種して部分亜硝酸化反応を継続し,約2ヶ月程度でAnammox反応とみられる亜硝酸イオンとアンモニウムイオンの同時除去が確認され,その後,窒素負荷を段階的に上昇させながらDO,pH,アルカリ度などの諸条件と窒素除去能との関係を調べた。その結果,窒素負荷が約1.2kg-N/m3/dの条件下で,85%以上の窒素除去率(残留窒素濃度/流入窒素濃度)が達成された。しかし上述したように,地震の影響による進捗の遅れから,細菌叢解析を含めてそれ以上の十分な検討をするには至らなかった。そのような事情から本補助金について平成29年度1年間の延長を申請し,許可をいただいたところであり,引き続き検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
H28年度の研究実施計画は, MBRによる一槽型の部分亜硝酸化-Anammoxプロセスの立ち上げに関して,部分亜硝酸化反応からの自発的なAnammox反応の発現による手法の開発,窒素負荷の検討,長期間に亘る連続運転の可能性の検討,窒素除去能と運転条件との関係解明,細菌群集構造の解明であったが,2016年熊本地震の影響にて十分な成果が得られたとは言えない。このため,1年間の研究期間の延長を申請し認められたところである。ただし,これまでの研究成果をまとめ,国際学会誌(IF:2.76)での論文発表を行えたことを鑑み,上記の達成度と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
1年間の研究期間延長が認められたので,上述したようにAnammox反応の自発的発現を利用するMBRによる一槽型の部分亜硝酸化-Anammoxプロセスの構築とその安定維持,および窒素除去能の向上に関する知見を収集するとともに,次世代シーケンサーによる部分亜硝酸化と部分亜硝酸化-Anammox法における共生培養系の詳細な細菌叢解析を実施するとともに,一槽型プロセスにおける部分亜硝酸化反応とAnammox反応のモデルの構築を試みる。さらにH29年度は,実用化の可能性を検討するため,槽内循環ばっ気法による反応プロセスの構築や実廃水への適用についても検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年度熊本地震により,当研究を実施していた実験室の一部損壊と浸水被害,研究に携わっていた大学院生などの帰国・帰省,条件検討に使用していた機器類の破損により研究に遅れが生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
主に,プロセスの窒素除去能の向上と安定維持に関わる連続運転に要する消耗品の購入と,実験室での細菌叢解析の実施,および次世代シーケンサーによるDNA配列など外部委託分析に要する費用に用いる
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