研究課題/領域番号 |
26289186
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
西脇 智哉 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60400529)
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研究分担者 |
権代 由範 仙台高等専門学校, 建築デザイン学科, 准教授 (00553520)
五十嵐 豪 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10733107)
桐越 一紀 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 技術専門職員 (60240660)
高橋 典之 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60401270)
石山 智 秋田県立大学, システム科学技術学部, 助教 (80315647)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 建築構造・材料 / 自己修復コンクリート / UHP-FRCC / メンテナンスフリー / 耐久性 / クリープ / 埋設型枠パネル |
研究実績の概要 |
平成27年度には、大別して[1]FRCCおよびUHP-FRCCの調合設計に関する検討、[2]複合劣化環境での自己修復効果に関する検討、[3]構造部材への適用に関する検討の3項目を検討した。調合設計に関しては、新たにナイロン66繊維の適用を検討した。また、UHP-FRCCにPVA繊維を付加することで、より大きな自己修復効果を得られることを確認した。複合劣化環境における自己修復効果の検討については、JIS A 1148をベースとして塩分環境下での凍結融解サイクルによる促進試験を行い、凍結融解サイクルによる劣化が、その後の水中暴露によって回復可能であることを確認した。加えて、持続荷重下において塩分浸透試験を行い、内部鉄筋の腐食を抑制できることを確認したほか、クリープ挙動自体についても確認し、UHP-FRCCはひび割れが生じた状態でも、クリープ変形を抑制できることを示した。劣化環境での暴露試験については、暴露場所の調整が難航したため着手できなかった。 構造部材への適用に関しては、UHP-FRCCを埋設型枠パネルとした縮小サイズの梁供試体を作製し、載荷試験を行って構造的な補強効果を確認した。パネルにはコンクリート部分と一体化させるためのリブを設けたものも準備し、力学性能に与える影響を確認した。パネル設置により梁の曲げ耐力は向上したものの、リブがない場合にはパネルの剥離が、リブがある場合にはコンクリート部分にせん断破壊の先行が認められたため、一体化の方法について更に検討が必要である。ただし、パネルには微細な複数ひび割れが生じ、高いエネルギー吸収性能が確認されたことから、提案する自己修復FRCCの躯体表層への適用自体の有効性は確認できたと考えている。また、これらの実験結果をファイバーモデルによる数値解析によって検討を行い、概ね良好に評価することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画当初に想定していた平成27年度の研究課題は、研究実績の概要にも記載の通り、[1]FRCCおよびUHP-FRCCの調合設計に関する検討、[2]複合劣化環境での自己修復効果に関する検討、[3]構造部材への適用に関する検討の3項目と相違ない。[1]については、特にUHP-FRCCとPVA繊維の併用によって高い自己修復効果を得られることを、気密性の回復によって確認できており、概ね期待した通りの結果が得られつつある。[2]については、塩分環境下における凍結融解サイクルによる促進試験の結果から、FRCCの性能低下と自己修復によるその回復を確認できた。加えて、UHP-FRCC試験体を用いて、ひび割れを導入した上でのクリープ試験を実施し、クリープ変形の抑制が可能であることを確認しており、この点は計画時点よりも多くの成果が得られたものと考えている。ただし、複合劣化環境への屋外暴露試験については、設置場所の調整などが難航して実施できておらず、平成28年度の優先課題としたい。 [3]については、計画通りに埋設型枠パネルとした梁供試体を作製し、曲げ載荷試験によって基礎的な検討を行うことができた。ファイバーモデルによる数値解析との比較も行い、概ね妥当な結果を得ている。これらの結果は、平成28年度に予定している数値解析と実験の相互トライアル、および、試験体サイズの拡張のための基礎データとでき、この点については計画通りの実施ができたと考えている。これらの検討を総合的に判断すれば、概ね計画通りに進められているものと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の取り組みは、平成27年度と同様の3項目に大別される研究項目であり、これらを更に進めてメンテナンスフリーRC構造物の実現を目指す。[1]FRCCおよびUHP-FRCCの調合設計に関する検討については、合成繊維とUHP-FRCCの更なる組み合わせについて検討を行う。また、これまで検討してきたUHP-FRCCの調合ではセメント量が極めて大きくならざるを得ず、これに合わせて環境負荷も大きくなるものと予想されるため、フライアッシュ(FA)などの産業廃棄物系の混和材の大量使用についても検討を行う。この際には、[3]の構造レベルでの力学性能の変化とFA混入による環境負荷低減効果の双方を定量的に評価するための指標を提案したい。この指標については、既に海外の研究者と情報交換を始めており、本課題の範囲では実験的な検証を行う予定である。[2]複合劣化環境での自己修復効果に関する検討については、[1]で検討した各調合に対して、引き続き平成27年度同様の促進劣化試験を行うほか、[3]で行う構造部材レベルでの変形を想定した形のひび割れに対する自己修復効果についても実験的に検討を行う。また、持続荷重とクリープ変形は、長期に亘る継続使用を考えた場合には重要な検討項目であるため、引き続き実験による検討を行う。この際には、クリープ挙動単独での検討と、クリープ変形が生じた上での耐久性試験の両面から検討を行う予定である。また、暴露試験については少なくとも平成28年度前半に開始させる。[3]構造部材への適用に関する検討については、特にRC部材とUHP-FRCCによる埋設型枠パネルの一体化の方法について検討を行う。この際には、数値解析と実験の相互トライアルによって、より適切な接合方法などを検討する。また、実構造物への適用を見据えて試験体サイズを大型化しての検討も行うことを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初より平成28年度までの研究計画であるため、研究にかかる通常の支出を予定している。また、基金分が一部繰り越されているが、これは平成28年度に大型試験体を作製しての実験を予定しているため、その準備から廃棄に至るまでの必要経費が大きくなるものと予測されるため、これに充てることを想定している。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の主な支出計画としては、実験消耗品に加え、成果発表旅費などが大きな部分を占めると考えている。繰り越し分についての使用計画で最も大きい支出として予定しているのは、上述のように大型試験体による実験に用いるものである。
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