現行,内外装材として使用されるような薄板からなる部材は,その耐震性に関わる構造特性については明らかにされないまま,その使用目的にのみ適した形状が使用規定的に採用されているのが現状である.また薄板を冷間成形してなる断面は,その形状が非対称で複雑なため,合理的かつ簡便な設計法が確立していないのが現状である.以上の背景を踏まえ,本研究では,a)規則的な形状を繰り返すことで版を構成する波状鋼薄板,b)両面より薄板で高分子材料を挟み込む事により形成される版,c)冷間曲げ加工により成形した溝形状の任意断面を有する部材,を対象とし,それらの強地震及び強風時における安定性評価と耐震性能評価を行うと同時に,それらを適宜組み合わせた合理的な接合を含む構造形式の提案を目的としている. 平成28年度に行った研究サブテーマは,1)鋼薄板軽量構造のための適切かつ効果的な接合方法の開発,2)鋼薄板軽量構造の効率的効果的な構造形態の提案と座屈設計法試案の提示,の2つである. まず,昨年度に引き続き一軸対称断面を組み合わせた組み立て圧縮材および曲げ材について,接合条件および端部境界条件の違いに伴う座屈性状の変化,座屈耐力の変化を断面形状との関連で明らかにした. また,これまでの知見をもとに,鋼薄板の表面材と薄波板からなるコア材を組み合わせ,片側から作業可能なリベットを用いて接合することで,サンドイッチパネルを試作した.このサンドイッチパネルは,軽量でありながらも適度な剛性を有し,製作後に形態可変であることを意図したものである. これまでの成果を日本建築学会大会,鋼構造シンポジウムにて発表するとともに,日本建築学会論文集,鋼構造年次論文報告,国際会議へ投稿した.
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